◎前回のお話



新学期。


年中さんになった息子を幼稚園へ送り出した。


3月までは先輩がお迎えに来てくれていたが、4月からは園長先生の娘さんになった。



『おはようございます』


笑顔でお迎えに来てくれた。


『おはようございます。今日からよろしくお願いします。』


笑顔でバスに乗り込む息子。



『いってらっしゃい!』



と送り出した。



ところがだんだんと息子が変わっていった。



最初は楽しそうに通っていたのに、朝行くのを渋るようになった。



特に何を言うわけでもないが、パジャマを着替えようとしなかったりトイレから出て来なかったり…



『コラ!何やってんのよ!早くしなさい!!』



お母さん定番の口調でせかしたが動こうとしない。



『仕方ないか…』



すでにバスが来てしまう時間になってしまった為直接バス乗り場に出向いた。



バスが来る。



『おはようございます』



『おはようございます。すみません、なんだかなかなか起きようとしなくて…


ちょっと今日だけお休みさせてください。』



『わかりました。失礼します。』




先生はだんだんと疲れた表情をし笑顔も少なくなっていた。




家に戻り息子のところへ行く。



『どうしたの?なんで着替えないのよ?』


息子はうまく説明は出来ないが、ただとても嫌な顔をしていた。




『言わなきゃわかんないよー。なんかあったの?』




しばらく顔を見ながら聞いているとやっと口を開いた。



『バッチ…やだ』



『バッチ?』




なんだそりゃ?全く分からない。




『お友達と喧嘩したりしたの?』



首を横に振る。



『じゃぁ眠いの?』



また首を横に振る。



『バッチが嫌なの?』


大きく頷く。



バッチ???謎だ。





次の日から朝、旦那がいる日はバス乗り場まで送っていってもらった。




『送ってきたよー。ねー、あんなに先生愛想なかったっけ?』



『やっぱそう思う?』



『まぁ近々授業参観あるから様子見てくるか?』




『だねー。』




息子の様子は気になったが【バッチ】と言われても全く分からず…



なんとか幼稚園に通わせつつ参観日の日を迎えた。




『こんにちは!』



息子の同級生のママに挨拶した。



『いつも元気だねー!柏崎さん!』



『そんなことないよー。』



他愛ない話をし挨拶をした。



『ねえねえ、ちょっと聞いてもいい?』



『何?』



『バッチって何?』



そう聞くとママの顔がくもった。




『うちの娘がさーお風呂で言うのよ。【タマゴバッチが嫌】って。』




『タマゴバッチ!?』



授業参観の内容など全く耳に入らない。



『何それ?詳しく教えて?』



1番後ろの隅でママと小さな声で【タマゴバッチ】の秘密を教えてもらった。