私が名刺交換させていただいた方はお気づきかもしれませんが、私の名刺の裏には、次のような十編の言葉が記されています。

 
損得より先きに善悪を考えよう
創意を尊びつつ良い事は真似ろ
お客に有利な商いを毎日続けよ
愛と真実で適正利潤を確保せよ
欠損は社会の為にも不善と悟れ
お互いに知恵と力を合せて働け
店の発展を社会の幸福と信ぜよ
公正で公平な社会的活動を行え
文化のために経営を合理化せよ
正しく生きる商人に誇りを持て
 
商売十訓――商業界創立者、倉本長治をはじめとする商業啓蒙家の先達たちの思想をまとめた、一編14字から成る真商人の行動指針です。
じつにシンプルな言葉ですが、それゆえに深い意味をたたえおり、折々にその真意に思いをめぐらせます。
 
最近も、それぞれを次のような対義語に意訳してみました。
 
 
いかがでしょうか。
もちろん、右側の言葉が商売十訓の教えるところです。
損得より善悪を、他店の表層的模倣よりも独自性の追求を、売り手の都合よりも買い手の満足を大切にする――という具合です。
 
私たちは、ややもすると左側の価値観に囚われがちです。
スターウオーズに倣うと、ダークサイドですね。
暗黒面に走らないためには、鑑のように澄み渡った誠実な心が必要です。
商いとは人間を磨く生業です。
良き商人とはすなわち良き人間、十訓の真意はここにあります。
取材を通じて、そんな商人と出会い、彼ら彼女らから学ぶべきことを、皆さんにお伝えすること、それが私の仕事です。