初めての方は、このブログを通して貫く基本概念である主観と客観との違いについての説明をしている以下の記事をご覧ください。

 

 主観と客観

 客観についての補足

 外国人には思い遣りがガチでないという事実

 優しさ(主観的)と思いやり(客観的)

 二種類の「正しさ」

 日本の常識は世界の非常識、日本の非常識は世界の常識

 

 筆者が海外の大学院にいた頃の話である。

 

 その教授は、アジア政治の専門家として長年その大学に君臨してきた。とある北米の大学である。彼と、日本の安全保障体制についての話をした際、日本の自衛隊が法的には不安定な状況にあり、かつ軍として認められていないことから軍法がなく、したがって何かことあるときは一般法たる刑法によって縛れる、という話をした。つまり、もし北朝鮮もしくはシナの兵隊が日本を侵略した際、相手が武器で攻撃を仕掛けてくる前にこちらから発砲した場合、刑法における正当防衛が認められず、相手が死んだ場合は、刑法により殺人罪で起訴される恐れがあるということである。これはもちろん、日本国憲法9条の制約があるからである。

 

 これはもちろん、客観的な法律の話であり、主観的な意見の話ではない。

 

 この状況は世界的に見て特殊なものである。何故ならば、他国の軍隊はすべからく軍法によりその行動を規定されているため、異国人が侵入してきた場合、その時点で既に国際法に照らして不法行為であることが明らかであるために、相手が発砲する前に攻撃を仕掛けて相手を射殺しても、当然ながら国内法、ましてや一般法たる刑法によって罪には問われないのである。相手が攻撃して初めて反撃ができるとされてる自衛隊の状況がむしろ国際標準では異常である。相手の初期攻撃により殺される可能性が大であるからである。死ぬかもしれない危険を犯しても一般法を遵守しろ、相手に発砲されろと言われている軍隊は、世界広しといえどもどこにも存在しない。

 

 これがいかに世界の軍隊の、あるいは安全保障の常識から照らして異常すぎるほど異常な状態であるか、別に安保問題の専門家でもなくても理解できる。

 

 ところが、である。先にあげたアジアの専門家は、その話をした際、ただ眉を顰めて、いかにもどうでもいいという表情で、そんなことは大した問題ではない。日本には自衛隊がいるので国防上問題ないと吐き捨てたのである。そもそも、この教授は私の指摘した問題、つまり軍法の話を、知らなかったのである。それを知らずに、東アジアの安保状況について、専門家として講義してるわけである。

 

 筆者の驚き具合は読者諸君のご想像に任せるが、呆れて言葉がつげなかったものである。

 

 ある高級料理店を想像していただく。その店はある外国にあり、日本料理の専門店として経営している。そのレストランの総料理長は、日本料理の専門家としてその店と地域、あるいは国で認められている。ところが、日本人の我々が食べてみたら、どうも味がおかしい。不思議に思って料理長を訪ね、どういう調味料を使っているのかを確認したところ、彼はこう言い放った。

 

 「ああ、これね。これは醤油でも味噌でもソースでも酢でもなんでもいい。そんなことは特に問題ではないんだよ。でも、私の作る料理は、本物の日本料理なんだ。だって私は、この専門料理店の総料理長なんだからね。」

 

 その店の客の大半は、その国の住民であり、日本料理が何かを知らない素人ばかりである。それゆえに、客たちは日本料理の本当の味を知らない。それをいいことに、その料理長はデタラメな調味料をその場の気分で決めて適当に出しているのである。そして、そこにたまたま入った本物の日本人のあなたが、このやり方はおかしいのではないかと聞くと、上記のように言い放ったのである。

 

 これを異常だと捉えない日本人は、筆者の想像ではおそらく、ごくごく少数に限られるのではあるまいか。

 

 別に外国の大学だけではなく、日本の中にいる専門家たちにもこれに似たような人はいるし、むしろ地上波の番組でしたり顔でコメントしている人たちの大半は、この教授のような人たちであるから、外国人に限った話ではない。

 

 今回の話の本質は、専門家と名乗る人たちの中には、とんでもないいい加減など素人が混ざっていることが多いという話である。その分野の本質を理解できないのに、専門家を名乗る人たちを見極める目は、私たち一人一人にかかっていることを、常に忘れるべきではないであろう。

 

 今回もお読みいただき、ありがとうございます。

 


国際政治・外交 ブログランキングへ

 

AD

コメント(1)