瑠璃色の珠実をつけし木の枝の小現実を歌にせむかな
(珠実=たまみ)
宮柊二『小紺珠』
散歩途中の山林に偶然、ムラサキシキブを見つけた。写真だと大粒に見えるが実際は注意していなければ、気がつかず通り過ぎてしまう位の小さい実だ。
秋口のまだ緑の葉を湛えている頃のムラサキシキブの紫の実と葉のコントラストも美しいが、しかしなんと言っても、冬枯れの林の落ち葉や小枝を踏み鳴らしながら見るムラサキシキブの方が一段と美しい。
葉をすべて落とした後にに残る紫の実はとても優しい色をしている。
掲出歌に「瑠璃色の珠実…」とあるがこれはムラサキシキブの事であり、『小紺珠』(しょうこんしゅ)という歌集タイトルもこの歌から採ったものである。
この歌集は宮柊二の終戦直後、約二年間の生活が背景になっている。
戦後の苦悩を抱えながら独り山中や街中を、さ迷い歩く柊二。
色鮮やかな赤い実ではなく、周囲のひかりを静かにたたえているような紫の実を見て、柊二は心を動かしたのであろう。
これからを生きようとする柊二の決意がこの歌に垣間見えるような気がする。
今年もあと残すところ二週間をきった。