7月20日新しいチェアマンが誕生した。そしてその翌日五輪世代とフル代表2つのカテゴリーで新監督が誕生した。良い方向に「変わる」ことを心から期待したいと思う。
一つの組織、体制を3年とか4年とか続けると「言わなくても伝わる」といったように連携が良くなったり、やりやすさが出てきたり良い事もあるが、一方で悪い意味での「慣れ」とか「問題の本質が隠れてしまう」こと等良くない事もある。そんなこともあり、データスタジアムでも体制を大幅に変えた。悪い意味での「慣れ」の払拭と、「今」すべき事から「将来のために今」すべき事を分けてそれを組織に当てはめた体制に変えた。
オシムジャパン同様数年後に大きな花を咲かす事を目指して・・・
話はそれたが今回は日本代表のストロングポイントについて考えてみたい。
多くの人がサッカーに関する雑誌、新聞の記事、TVの解説者達から「決定力の無さは課題だが(いわゆるウィークポイント)、日本の技術、特にボール回しの素晴らしさは世界に通用する武器(これがストロングポイント)」ということをさんざん聞かされていたと思う。
これが事実であれば、日本はこの武器を使ってゲームのイニシアチブを取りながら、ここだという時に一気にフィニッシュまでもって行けばよい。一方でシュートの精度を高めるための対策をしっかり立てながら。
しかし、ストロングポイントがそもそも違っていたら??
シュートまで持って行く形を作ることが出来ず、一方で「シュートを積極的に打て!」というプレッシャーの中で無理な体勢からのシュートを打ち続けることになる。その結果は、言うまでも無しという感じになる。
W杯でのパスに関するデータから「日本のストロングポイントはボール回しの技術である」かどうか検証してみたい。
パス回しの技術があるかどうかを見るためにパスの成功率と絶対数を見るのがいいと思う。
「自陣のプレッシャーの無い中で回した結果成功率が高くても意味が無い」というのもある意味事実なのでエリアごとの成功率とパス数を見てみた。(グラウンドを縦方向に3分割=35m区切り。相手ゴールに近い方からアタッキングサード、ミドルサード、ディフェンシブサードと呼ぶ)また、この分析のためのサンプルを予選リーグの3試合のデータとした。
日本が世界に誇ると言われていた中盤では85.6%の成功率で出場32チーム中堂々の8位となっている。
(パスの回った本数は721本で23位)
一方、アタッキングサードでは、その成功率は62.7%、順位は20位まで下げる。(パスの回った本数は233本で26位)
確実な処理とビルドアップが求められるディフェンシブサードでは70.8%、順位は後ろから6番目の27位という結果になっている。(パスの回った本数は342本で18位)
これらの数字が持つ意味合いの合理的な説明のためには、それぞれのエリアから出されたパスが同一エリア内なのか?あるいは別のエリアなのか?成功率の高いミドルサードでのパスは攻撃にのためのパスか?相手のプレッシャーから逃げるために後ろに戻したパスか?その他細かくデータを検証していく必要がある。
それらのデータを検証していった結果以下のことが言える。
1.日本は、W杯出場32か国中決してボール回しがストロングポイントと言えるほどのデータの根拠は無い。
2.ミドルサードでパスの成功率が高いのは、そのエリアで受けたボールを相手のプレッシャーの無い中で回して積上げたパスの結果高くなっている。
3.ミドルサードから後ろへのパスの比率、横パスの比率が高いことがそれを証明している。後ろへの戻しのパスがディフェンシブサードにいるディフェンダーに繋がることによってミドルサードの成功率は上がる。一方、中盤がプレスされた状態で戻されたパスに対してディフェンダーが出来ることは中盤を飛ばしたアタッキングサードへのロングフォーワードパスだけとなり、結果それが繋がらずディフェンシブサードでの成功率が低くなっている。
4.相手ディフェンダーがしっかりついているアタッキングサードではFWのパスの成功率、ストップの成功率共に低い。つまり相手の選手が付いている中でボールは回せない。
5.上記4の状況が中でプレーしている選手は分かっているのでミドルサードから前方へのパスが少ない。
6.etc.etc
自分自身、海外から来てJリーグで監督をした人や選手と話す機会は多いが、日本人選手の特徴に技術の高さをあげる人は多い。練習を見てそう感じると言うことは実際高いのだろう。
問題は、その技術の高さをW杯のような厳しい戦いの中で、練習より0.1秒寄せが速く、10cm足が伸びる状態でどのように発揮するかだと思う。
現時点でボール回しがストロングポイントであると言う幻想は捨てて、冷静に何が強みか?世界と戦うために何を伸ばしていくべきか?分析して取り組んでもらいたいと思う。
以下はオシム新監督の就任インタビューで日本サッカーの目指す方向について聞かれた時の言葉です。
「素晴らしい敏捷性、そしていい意味でのアグレッシブさ、そして個々人のいい技術です。ただこの個々人のいい技術がまだチームのために働いていない気がします。他にも考えるべき点があります。例えば走りのスピードと展開のスピードです。今まで日本はスピードのあるチームではありませんでした。もっとスピードにのったプレーができると思います。」
この言葉の奥に、日本がこれまで信じ込んで来たためにある意味進化する機会を失ってきたことに対する警笛が含まれている気がする。
彼がこれまでの我々の驕りから目を覚ましてくれて、本当に進化をもたらしてくれる指導者であることを願ってやまない。
平成18年7月23日(日付書いて明日が誕生日だと気がついた。何歳か考えるのは怖い。。。)