知的財産と調査

知的財産、特許調査やニュースに関する雑感です。


テーマ:

特許庁が審判実務者研究会報告書2016を公表しました。

 

この研究会は元々「進歩性研究会」だったのですが、現在は「審判実務者研究会」という名称になり、記載要件、発明該当性、意匠の登録要件など進歩性以外の拒絶理由についても研究を行っているようです。

 

要約編はコンパクトにまとまっており、特許庁の考え方を勉強するのに役立ちそうです。

 

http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/kenkyukai/sinposei_kentoukai2016.htm

審判実務者研究会報告書2016の公表について

平成29年2月22日 特許庁審判部

特許庁審判部では、平成18年度(2006年度)から、産業界、弁理士、弁護士及び審判官という各々立場の異なる審判実務関係者が一堂に会して審決や判決についての研究を行う「審判実務者研究会」(当初は「進歩性検討会」)を開催し、その成果を公表するなどの取り組みを行っています。

今年度も、審判実務上重要と思われる審判決事例について専門家による研究を行いました。今年度の研究会には、新たにオブザーバーとして、知的財産高等裁判所及び東京地方裁判所の裁判官が加わり、これまで以上に充実した議論が行われました。

今年度の研究会における成果を取りまとめた「審判実務者研究会報告書2016」を作成しましたので公表します。

[更新日 2017年2月22日]

 

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

様々な混乱を引き起こしているトランプ大統領ですが、中国へ出願していた建設業界に関する商標が登録されたとのことです。

 

これについて、米連邦政府当局者が事業を通じて外国から報酬を得ることを禁じる米憲法規定に違反していると提訴されたそうですが、自分にはなぜ利益供与に該当するのか、よく理解できません。

 

商標登録は、不動産や会社の登記と同じようなものです。大統領など政府関係者が外国に別荘を持っており、それが登記されたからといって、外国から利益を得たということにはならないはずです。商標も同じです。

 

トランプ氏の商標が最近になって登録されたことには、何らかの政治的配慮があったのかもしれませんが、商標登録を受ける=外国からの利益供与というのは、少し違うのではないでしょうか。

 

もっとも、トランプ氏が大統領の任期満了までやるつもりなのかわかりませんが、もう事業をやっている時間はないでしょう。

中国の商標出願についても、息子、娘など後継者へ譲渡し、名義変更をしておけば、このような騒ぎにはならなかったのでしょう。

 

http://www.cnn.co.jp/business/35096799.html

香港(CNNMoney) 中国政府が、トランプ米大統領やその中核企業が10年以上にわたって申請していた中国の建設業界における「トランプ」の商標権を承認し、正式の登録作業が最近終わったことが18日までにわかった。

 

長年頓挫していた申請がここに来て認められ、登録へ進んだことについて、トランプ氏の大統領就任を受けた政治的思惑が背景にあるとの指摘が出ている。また、同氏の利益相反問題と絡める見方もある。

 

中国の商標権審査当局は昨年9月、「トランプ」の商標登録を同じく要請していた競争相手の言い分を退ける判断を示した。大統領選が終了した11月には、商標権をトランプ氏の中核企業「トランプ・オーガナイゼーション」に与えていた。最近の登録作業の終了は3カ月の異議申し立て期間が終わったことに伴う。

 

中国側の今回の対応について、オバマ前政権のホワイトハウスで倫理問題を担当した元高官は「トランプ氏からの譲歩を期待している」と推測。同氏に影響力を及ぼそうとする最初の努力に見えるとも述べた。

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

本日、平成28年12月分 特許出願等統計速報が公表されました。

 

傾向としては先月と変わりませんが、昨年12月は前年比でやや出願件数が増えています。

http://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/syutugan_toukei_sokuho.htm

 

商標のみ10%以上の減少ですが、特許・実案、意匠、国際出願の受理・指定とも増えています。

 

H28.1~12の1年間を、H27.1~12と比べると、商標が増加した以外は、ほぼ同じ件数です。商標の増加は上田氏の影響かもしれません。

出願数の減少も、やや下げ止まってきたようにも見えます。

 

昨年12月の特許異議件数は110件と少なくはありません。H28.1~12の1年間で1,334件とのことです。

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

文化庁のホームページには、まだ情報が載っていませんが、毎日新聞によれば、2/13(月)の文化庁審議会「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」で、以下の報告書が提出されたとのことです。

 

http://mainichi.jp/articles/20170214/k00/00m/040/057000c

 「柔軟な権利制限(無許諾利用)」の規定を、著作権法に導入することを検討している文化審議会のワーキングチーム(WT)は13日、事業者が著作物を無許諾で電子化し、ネット検索サービスで活用できることなどを盛り込んだ報告書をまとめた。文化庁は会での議論、報告書を踏まえ、同法改正案をまとめるが、今国会提出は見通しが立っていない。

 同法は文章、画像、音楽など著作物を利用する場合、著作権者の許諾を得ることを原則としている。公益性などを理由に、著作権者の権利を制限する規定もあるが、「柔軟な権利制限」は情報通信技術の進展に即し、より制限を広げようとするもの。

 想定しているのは、キーワードを入力すると、書籍名やテレビ番組名など情報のありかに加え、著作物の一部を表示する「所在検索サービス」など。検索結果では一部を見せるだけなので、無許諾利用でも著作権者の不利益が軽微だと判断。「新たな知見や情報をもたらす社会的な意義がある」とした。

 一方で、現行の有料検索サービスへの影響など、著作権者の不利益に配慮する必要性も示した。

 

 

1ヶ月前の情報ですが、2017/1/23文化庁の文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」(第5回)によれば、以下の3つの「層」について、それぞれ適切な柔軟性を確保した規定の整備を予定しているそうです。

http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/needs_working_team/h29_05/index.html

○ 以上の分析を踏まえれば、我が国における「柔軟性のある権利制限規定」の整備については、明確性と柔軟性の適切なバランスを備えた複数の規定の組合せによる「多層的」な対応を行うことが適当である。具体的には、以下のとおり、権利者に及ぶ不利益の度合い等に応じて分類した3つの「層」について、それぞれ適切な柔軟性を確保した規定を整備することが適当である。(イメージにつき別紙参照)

 

[第1層] 権利者の利益を通常害さないと評価できる行為類型
著作物の表現の享受を目的としない情報通信設備のバックエンドなどで行われる利用がこれに該当する。この類型は、対象となる行為の範囲が明確であり、かつ、類型的に権利者の利益を通常害しないものと評価でき、公益に関する政策判断や政治的判断を要する事項に関するものではない。このため、行為類型を適切な範囲で抽象的に類型化を行い、柔軟性の高い規定を整備することが望ましい。

[第2層] 著作物の本来的利用には該当せず、権利者に与える不利益が軽微な行為類型インターネット検索サービスの提供に伴い必要な限度で著作物の一部分を表示する場合など、著作物の本来的利用には該当せず、権利者に与える不利益が軽微なものがこれに該当する。この類型は、当該サービスの社会的意義と権利者に及び得る不利益の度合いに関し一定の比較衡量を行う必要はあるものの、公益的必要性や権利者の利益との調整に関する大きな政策判断や政治的判断を要する事項に関するものではない。このため、権利制限を正当化する社会的意義等の種類や性質に応じ、著作物の利用の目的等によってある程度大くくりに範囲を画定した上で、相当程度柔軟性のある規定を整備することに馴染むものと考える。
[第3層] 公益的政策実現のために著作物の利用の促進が期待される行為類型著作物の本来的利用を伴う場合も含むが、文化の発展等の公益的政策の実現のため権利者の利益との調整が求められる行為類型であり、現行権利制限規定では、引用、教育、障害者、報道等の様々な場面の権利制限規定がこれに該当する。この類型は、基本的には公益的必要性や権利者の利益との調整に関する政策判断や政治的判断を要する事項に関するものである。このため、一義的には立法府において、権利制限を正当化する社会的意義等の種類や性質に応じて、権利制限の範囲を画定した上で、適切な明確性と柔軟性の度合いを検討することが望ましい。

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

本日、平成28年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキストが公表されました。

以下のような特許情報関係のテキストもあります。

 

1 特許の審査基準及び審査の運用
3 特許分類の概要とそれらを用いた先行技術文献調査
4 特許情報を利用した技術動向分析について
10 国際調査及び国際予備審査
12 PATENTSCOPEの概要

 

http://www.jpo.go.jp/torikumi/ibento/text/h28_jitsumusya_txt.htm

平成28年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキストは、下記のとおりそれぞれPDF形式で提供しております。講義によって、テキストの他に当日説明に使用した資料もございますので、適宜ダウンロードの上ご利用ください。それぞれのテキストの著作権は以下に属します。

テキスト11、12、15、19 → 世界知的所有権機関
テキスト26~29、32~34 → 経済産業省
上記以外 → 特許庁

なお、下記のテキストは社内研修等での利用を目的として、テキストを全部・一部ともダウンロードの上ご利用いただけます。

ご利用の際は、必ずこちらを御一読の上、出典等を明記してご利用ください。

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

JASRACが音楽教室から著作権料を徴収すると発表して以降、反発が拡がっています。

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170203-00000049-asahi-musi

日本音楽著作権協会(JASRAC)が音楽教室での演奏をめぐって著作権料を徴収する方針を決めたことに対し、教室を運営する事業者などが「音楽教育を守る会」を結成し、3日発表した。著作権法が作曲家や作詞家が専有すると定める演奏権は教室での演奏には及ばないとして、徴収に反対する活動をしていくという。

結成したのは、教室を運営するヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所のほか、ピアノ教師らでつくる全日本ピアノ指導者協会など7企業・団体。代表に就任したヤマハ音楽振興会の三木渡・常務理事は「教室を運営する事業者に広く参加を呼びかけ、教室での演奏は教育目的で演奏権は及ばないという法解釈を共有していきたい。JASRACと主張が平行線をたどる場合は、司法判断を求めることも検討したい」と話している。会はほかに、開進堂楽器、島村楽器、宮地商会、山野楽器が参加している。(赤田康和)

 

JASRAC側の主張は、音楽教室で教師が演奏するのは、JASRAC管理著作物の演奏権の権利が及ぶというものです。

 

一方、音楽教室側は、講師や生徒が練習のために弾くことが、「聞かせるための演奏」に該当せず、演奏権は及ばないと考えています。自分も同感です。音楽教室の先生は生徒へ曲を聴かせることを目的とはしていません。

もし1対1、1対2の教室であれば、生徒が公衆に該当するのかも疑問です。

http://www.news24.jp/articles/2017/02/02/07353127.html

ヤマハ音楽振興会は「音楽教室の中で、講師や生徒が練習のために弾くことが、『聞かせるための演奏』に該当しないとの考え」とコメントしている。また、「河合楽器製作所」も、今回の著作権料について疑問を呈している。
 

仮に著作権料を徴収するとしても、標準化特許のように、料率0.3%といった、廉価な設定で良いのではないでしょうか。

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

特許庁が「特許審査基準のポイント」と「ライフサイエンス分野の審査基準等について」を公表しています。

 

特実審査基準は量がかなり多いですが、この資料では重要なポイントをまとめて説明しています。

実務経験の少ない方や、弁理士受験生にも有用そうな内容です。

 

弊所でも、所員の教育用に使えないか検討したいと思っています。

 

http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/tokkyo_shinsakijyun_point.htm

平成29年1月 特許庁調整課審査基準室

特許の審査基準のポイントの資料を提供しています。

なお、最新の審査基準等は、以下のページでご確認ください。

 

http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/lifescience_kijun.htm

平成29年1月 特許庁調整課審査基準室

大学の研究者や特許管理者等を対象に、ライフサイエンス分野の審査基準や審査ハンドブック等を説明した資料を提供しています。

なお、最新の審査基準等は、以下のページでご確認ください。

 

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

昨日、特許庁が平成28年11月分 特許出願等統計速報を公表しました。

 

http://www.jpo.go.jp/shiryou/toukei/syutugan_toukei_sokuho.htm

 

11月は、10月、9月に比べて、特許実用新案、商標の出願数が増えていますが、昨年並みです。

特許異議は94件で、増えてはいませんが、100件程度をキープしています。

 

出願減の原因として、日本企業が国内出願を減らし、その予算を外国出願に回しているため、と言われてきました。

しかし、先日の米国特許取得数ランキングでは、日本企業がランクを下げています。

http://ameblo.jp/123search/entry-12236778755.html

 

やはり出願減は、日本企業の研究開発力が落ちていること、産業構造の変化により製造業からサービス業へシフトしていることが原因でしょう。

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

数日前から騒ぎになっていますが、元弁理士の男がピコ太郎の「PPAP」に関連したワードを何件も、商標登録出願しています。

 

この男は取材に対し「1時間で5万円」を要求したとのこと。

https://sirabee.com/2017/01/26/20161061337/

VTRは、上田育弘氏から1時間5万円の取材料を要求されるところから始まり、これを取材班が拒否すると、「短時間なら」と取材に応じた。

 

そして、会社が「登記されている住所は築40年の住宅向け3階建ての賃貸アパート。間取りは1Rで家賃3万円ほどの格安物件」だそうです。

 

なお、自分は年末年始、海外にいたこともあり、紅白歌合戦も観ておらず、PPAPにも全然興味はありません。

 

同一又類似の商標が出願ないし登録されても、商品や役務(サービス)が非類似であれば、商標の使用は可能です。

そして、日常会話などは商標的態様の使用でないため、商標権の効力は及ばず、商標登録された言葉を使うことができます。

 

「商標は先願主義だから、出願が遅れた者にも落ち度がある」。

一面では正しいです。

しかし、手数料(印紙)を払わずに、次々と商標出願を行うのは無銭飲食と同じです。さっさと逮捕すべきでしょう。

 

手数料が不足していても、半年程度出願が却下されないのは、過失により不足する場合があるためで、故意に料金を払わない者を放置するのは制度の趣旨に合致しません。特許庁が手ぬるかったということでしょう。

 

一昨年、東京オリンピックのロゴが問題になった際には、弊所も商標調査依頼が急増しました。

今回は商標出願が増えるような気がします。弁理士を辞めた彼のせいで、商標の重要性に気づく方が増え、バブルが起きるかも。

 

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/198259

ピコ太郎の「PPAP」に関連したワードが、縁もゆかりもない会社から大量出願されている騒動。商標は先に出願した人の権利が認められる「早い者勝ち」が原則だけに、そのガメツサには、関係者でなくても目がテンだ。どうやら、その世界では知られている人物らしい。

問題の会社は、大阪府茨木市に本社を置く「ベストライセンス株式会社」。登記によると資本金は500万円で、2014年に設立され、元弁理士の上田育弘氏が代表を務めている。

 

「上田氏は数年前、弁理士会への登録をやめたので、今は正規の弁理士活動はできません。ちょうどそのころから、無関係の商標の大量出願を始めたようです。しかも、出願時に必要な登録手数料(1件1万2000円)をまったく支払わないので、特許庁も業を煮やし、対策を練っている矢先だったのです」(法曹関係者)

今回はどう答えるのか。固定電話にかけると、「お客さまのおかけになった電話番号は現在使われていません」。ちなみに、登記されている住所は築40年の住宅向け3階建ての賃貸アパート。間取りは1Rで家賃3万円ほどの格安物件だった。日々の生活にも困窮しているのか。

いいね!した人  |  リブログ(0)

テーマ:

Westlaw Japanに、販売開始前の商品の形態の模倣行為に対して、不正競争防止法2条1項3号の保護を肯定した知財高裁裁判例の解説が載っています。

解説は、北大の田村教授です。

 

この控訴審裁判例では、 不正競争防止法2条1項3号の保護の始期と、スティック状加湿器の著作物性が争点となっています。

裁判体は知財高裁2部(清水裁判長)でした。

 

保護の始期を実際に販売された日ではなく、展示会へ出展した日としたのは適切な判断と思います。

しかし、スティック状加湿器の著作物性について、個別具体的な創作性判断をなしているのは行き過ぎと思います。

 

田村教授が主張するように、このような工業製品については、一律に著作物性を否定して良いでしょう。

田村教授は、「定型的に著作物を否定するための道具として、美術の範囲の要件を活用すべきである」と主張されています。

 

1/27で知財高裁の設楽所長が定年になります。後任は清水判事が有力視されています。今後、過度に創作性重視の傾向が強まると、かえって企業活動を萎縮させることになり、好ましくありません。

http://www.westlawjapan.com/column-law/

Ⅰ はじめに
 本コラムがとりあげるのは、展示会や見本市に出展したが、販売開始前の商品の形態の模倣行為に対して、不正競争防止法2条1項3号の保護を肯定した知財高判平成28.11.30平成28(ネ)10018[スティック状加湿器]である。

  不正競争防止法2条1項3号は、商品形態のいわゆるデッド・コピーを不正競争行為であると定義しているが、同法19条1項5号イは、「日本国内において最初に販売された日から起算して3年を経過した商品」については2条1項3号の保護を否定している。したがって、「最初に販売された日」から起算して3年を経過した場合には、同号の保護が及ばないことは規定上、明らかであり、それが保護の終期となるが、いつから同号の保護が開始されるのか、すなわち、保護の始期に関しては、はっきりとした明文が置かれているわけではなく、解釈に委ねられている。

 そのようななか、本判決は、販売開始前の商品が、デッド・コピー規制による保護を享受しうる要件を明らかにしたという意義がある。あわせて、保護の終期の起算点である「最初に販売された日」についても判示した点も重要である。

 

Ⅴ 結びに代えて

 不正競争防止法2条1項3号に基づく差止請求を保護期間満了を理由に棄却したために、本判決は、原告から選択的に請求されていた著作権侵害の成否の論点にも立ち入り、結局、原告の商品(スティック状加湿器)につき著作物該当性を否定している。その結論自体は目新しいものではないが、工業製品である椅子の形状について、従来の裁判例と趣を異にし、著作物性を肯定した、知財高判平成27.4.14平成26(ネ)10063[TRIPP TRAPP]※29を担当した清水節裁判長が下した判決ということでも注目を集めている。

 前掲知財高判[TRIPP TRAPP]に比すると、抽象論として、美術の著作物の外延を画するのに、美的観賞性をもって当てるべきである旨が説かれるとともに※30、かりに本件で創作性が肯定されたとしても、別途、「美的特性」を備えているか否かの吟味は行われ得ることが示唆されているところ※31に反対説に対する配慮を伺うことができなくはない。しかし、具体的な手法としては、工業製品に関して、定型的に美術の範囲に属さないとして著作物性を否定するのではなく、個別具体的な創作性判断をなしていることに変わりはない(清水裁判長の下での同様の判決として、知財高判平成28.12.21平成28(ネ)10054[ゴルフシャフト]※32も参照)。

 詳細は、前掲知財高判[TRIPP TRAPP]に関する別稿※33に譲るが、デッド・コピー規制や意匠権侵害と異なり、業として行われることを要さず、無体的に利用する場合を含めて侵害とする著作権の保護を、一般の工業製品のデザインにまで押し及ぼす場合には、私人のものを含めて様々な行為が権利侵害のリスクを背負うことになりかねない。そのような事態を防ぐためには、個別の創作性を逐一吟味することなく、定型的に著作物を否定するための道具として、美術の範囲の要件を活用すべきである。本判決は、個別具体の創作性を吟味することにより原告加湿器の創作性を否定してはいるものの、美術の範囲の要件により定型的に著作物性を否定する方策を抽象論としては否定していない。今後の動向が着目される。

いいね!した人  |  リブログ(0)

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。