わかりやすい書き方
テーマ:ことば「日本人の知らない日本語 3」 を読んで思い出したもう一つは、機械翻訳です。
昨日と同じネタですので、やはりネタばれありです。
ネタばれ注意
「日本語初級学生に理解できる日本語で話す」 ことができる日本語教師が、それができない他の人とその学生との間で、通訳しました。
簡単で明確な日本語でしか話せない学生と、簡単で明確な日本語で話す能力がない日本人が日本語で話すためには、日本語の通訳が要る。
その話を読んでいて、機械翻訳を使うためにはプリエディットが必要という話を思い出したのです。
多くの場合、原稿をそのまま機械に読ませても機械が正しく理解できません。
なので、機械が理解できる形に予め人間が手直しすることが必要となります。
これ、ちょうど上記の日本語初級学生の話に当てはまりません?
複雑で曖昧な日本語は、機械に理解できるよう、簡単で明確な日本語に翻訳してあげないといけないのだ。
レベルを落とすと言うより、形式を変えるということです。
短い文にするとか、係り受けを明確にするとか、そういうこと。
機械翻訳ついでに、別のネタを。
プリエディットだけでなく、機械が翻訳したものは、今度は人間が理解できる形に直す必要があります (ポストエディット)。
前にも何度か書いてますけど、機械翻訳は融通が利きません。
だから医学文献とかはそこそこ訳せても、文学作品とかはまともに訳せまないと言うのが定説。
医学文献なら、専門用語の辞書さえちゃんと組み込んであれば、機械には難しくないらしい。
文そのものは単純だし、解釈の難しい言い回しも出てこないし。
機械のマニュアルなんかだと、文章単位で辞書に登録したりしてましたわ。
「ボタンを押して下さい」 を丸ごと辞書登録するとか、そういうこと。
でも文学作品は、歴史や文化や、あるいは世界共通の心の動きなんてものも、背景になっている。
つまり、書いてくれていない 「暗黙の了解」 が多すぎる。
文脈と言う概念もないので、「この流れからすれば当然こういう意味」 という単語の選び方や文意の解釈は不可能。
元の単語と訳語の組み合わせが正しいかどうかを判断する基準も持っていない。
定型文もない。
私は翻訳業界から離れて久しいので、最先端の機械翻訳がどうなってるのかは知りませんが、恐らく今でもそうなんじゃないかな。
他人事なら面白いと笑っていられる事件が、昨年も話題になっていましたもの。
上下巻で出版されたのですが、下巻の一部に機械翻訳が使われていたらしい。
機械翻訳を使う時点でどうかしてると思うけど、恐らくはプリエディットもしなかったのでしょうし、更に大きな問題は、ポストエディットしなかった章があると言う事。
2011年6月23日に発行されましたが、翻訳の崩壊っぷりに話題沸騰。
回収されて、8月に改訂版が発行されたそうです。
初版はその後ヤフオクで3倍の値段がついたそうなので、モノ好きも多いんだなと(笑)
上記リンクはアマゾンに跳びますが、上巻の一部を担当した翻訳者がレビューで内容と経緯を厳しく糾弾しています。
他人事のレベルでは非常に興味深いなあとか気楽に考えていられるので、読んでみて下さい。
(当事者だったらと思うと胃が痛いわ)
訳文を一部紹介しているレビューもあったようですが、削除されてしまいました。
でもそれを転載しているブログがある ので、ご興味のある方はリンク先を見てみて下さい。
原文を知らなくても、この訳文がおかしいことは明白です。
「誤訳騒ぎ」 と評している人もいるけど、語訳と言うレベルじゃないよ。
語訳って、間違った訳って意味でしょ。
間違う以前に、翻訳として成立していないもの。
経緯も簡単に説明されていますが、元翻訳コーディネータとしては、色々と詳細を想像してしまいますわ。
とにかく、通訳にしても翻訳にしても、ポイントは一緒。
「何を伝えようとしているか」 「何を知ろうとしているか」 という、『発言の意図』 を言葉から抽出して、聞く/読む側に説明する。
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