私たちは、付き合った数日後、こっちでの講習会を終えた山本くんを近くの駅まで見送りに行った
「お前、たまにはこっちにも来いよ」
「お前も、また、いつでも泊まらせてやるからなぁ('-^*)/」
「・・・・・あの部屋、少しは片付けろ・・・まぁ、お前らしいけどな」
しししっ!と笑った雄輔は、山本くんに大きく手を振って、改札から見送った
「山本くん!」
私は、切符を入れて改札を抜けたばかりの彼に声をかけた
「ありがとう!」
「よかったな」と言ったみたいな笑いのまま、後ろを向き、軽く手をあげてホームへ降りた
私は、雄輔とつないだ右手に少し力を入れて、付き合っていることを実感した
「・・・お前、なんで、いるの?」
「先輩と雄輔さん、付き合えたみたいですね」
山本さんが言った質問には答えず、私は、勝手に話をすすめた
出発時間と号車は、先輩から教えてもらっていた
「・・・・・そうみたいだな」
階段を降りてホームへやってきた山本さんに私は話しかけた
「・・・で、なんでいるの?」
「見送りです!山本さんの」
「わざわざホームまで来なくてもいいのに・・さっきも雄輔と由美が・・」
「2人の・・・邪魔したくないし、私は、ちゃんと見送りたかっていうか・・・お別れを言おうと思って・・・」
「・・永遠の別れみたいな言い方すんな」
「でも、次にいつ会えるか分からないし・・・」
「おい」
「はい!」
「俺、まだあいつのこと好きだよ」
「分かってます・・・顔に書いてますから」
「なんで、俺なんだ?」
「知りませんよ!好きになった理由なんて、、、、最初は見た目だけでしたけど・・・・・」
「見た目?」
「そうです!!背も高いにスラッとしていて素敵じゃないですか!・・それに話してみないとどんな人かなんて分からないんだから、見た目しか判断基準がないじゃないですか!」
「そこまで誉められると嬉しい」
「あっ、でも、今は見た目だけじゃないですよ!話をして、山本さんが優しいってことも分かったし!素敵な人なんだってのもわかってんですから!」
「俺のどこが優しい?」
「だから、山本さん、絶対に山本さんにも私のことをもっと知ってもらって、好きになってもらいますからねっ!」
相変わらず、強気発言な私だけど、反面、怖いと思う気持ちだってある
「お前、やっぱりイイやつだよな」
何となく、山本さんの言葉には見透かされたような含みがあった気がした
電車のアナウンスがホームに流れた
山本さんが、自分の乗車券を確認する
「なぁ」
「はい」
「次の学会、来月だから」
「・・・・・・はい!」
私は、元気に返事をした
「あっ、これ・・・、渡そうと思って・・・」
自分のカバンの中にしまっておいた封筒を出した
「・・あげます」
「何?手紙?」
もらった瞬間、開けようとしたので、
「あっ、中は、電車の中で見てください」
ホームにいきおいよく電車が入ってきた
風が私の髪の毛を吹き飛ばす勢いで通り過ぎる
山本さんは、自分の荷物を持ち直し、私が渡した封筒を反対の手に持った
私に背を向け、入り口が開くのを待つ
私は、我慢できなくなり、その大きな背中に頬を近づけた
「待ってますからね」
「・・・・」
何も言わず、振り向きもしない山本さん
扉が開くと、私が寄りかかったことに気がつかないような素振りで歩き、電車に足を踏み入れ、振り返る
「お前、やっぱりバカだな」
「そんなバカのこと、忘れたらダメですよ」
元気な笑顔でそう答えると山本さんは、口元だけで笑った
「愛!・・・またな」
そう言って、手を挙げた
は、初めて名前を呼んでもらえた!!
私は、嬉しくなった
思わず、電車に飛び乗ってしまおうかとも考えたけれど、私たちの間に扉が立ちはだかった
ガラス越しの山本さんの顔は、いつもの仏頂面に戻っていた
一瞬見せた、あの笑顔は忘れない
私は、ホームから電車が見えなくなるまで見送った
愛からもらった手紙・・・
気になる
シール1枚で封がしてある封筒を開ける
「あっ・・」
写真だった
いつの間に撮ったの分からないけれど、俺が寝ている横で愛がピースサインで笑っている
自分で撮ったんだろうと思われるほど顔が近い
自分の寝顔なんて、自分じゃ見られないから、少し恥ずかしくもあるけど、客観的に『自分ってこういう顔してんだなぁ』って思った
そして、もう1枚
雄輔のアホ面の寝顔と由美の寝顔・・・
あの時、飲んだときに撮ったものだろう・・
すると、1枚、小さなメモ用紙のようなものが写真の隙間から落ちそうになり、寸でのところで、落ちるのを防いだ
そこには、小さな女の子の文字で携帯の番号とアドレス
【絶対に連絡ください!見たらすぐに返信して下さい!!】という言葉が添えられていた
わざわざ、そんなこと書かなくても・・連絡くらいするっての
小さく笑って、自分のポケットに突っ込んでおいた携帯電話を出した
滅多に連絡が来ない俺の携帯に・・・次の日からあいつの一方的なメールが来ることになることを想像しながら、自分のアドレスと番号を入力して送信した
それに対して、
『短すぎです!!!』
っていうツッコミメールが返ってきた
「雄輔?」
「ん?」
「なんだか、楽しそうだね」
「・・・・・当たり前でしょ!」
私が不思議そうに首をかしげると、雄輔の手が私の頭の上に乗せられた
「俺は今、世界一幸せな男だからなぁ!!」
周りに歩く人に聞こえるくらいの大きな声でそう言って、つないだ手に少し力を入れ、大きく揺らす
声の大きさに驚きもして、少し恥ずかしくなったけど・・・
雄輔・・・
大好きっ!
~終わり~


