2004年03月28日

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冷えた空気の音が聞こえる。新聞配達の自転車の、チェーンとブレーキの音がする。吊るしてある高座着を畳む、丁寧に畳む。今日はなににしようかな?長唄のCDをかけて見る。ゆったりと、力強く「勧進帳」が流れる。昨日、高座で働いてくれた着物たちを畳んでいると、なぜか気が入って来る。折り目毎に気が入って来る。
2004年03月27日

表札

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「1日、15日は神棚のお榊を替えろよ」神棚も、お榊も、見るのは初めてだった「はぁ」なにがなんだか分からないけど、見よう見真似で神棚を掃除する。目に入ったのは「朝太」「志ん朝」の表札だった。煤けた色が美しい表札だった。東宝名人会の楽屋は、橘右近師匠の城。いつも楽屋で番をしている。勿論、寄席文字を書くのが仕事だけれど、前座やお囃子さんへの注意もする、番頭さんだった。いいお爺さんだったが、恐かった。大先輩の貫禄が、そう感じさせていた。「二ッ目になるんだって」「はい」前座最後の東宝だった。「おめでとう」とは言わずに差し出された表札に「古今亭朝太」と書いてあった。千秋楽のことだった。
2004年03月26日

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「あんた、なにやってんのよ」母親が怒鳴った。山手線は、目白から高田馬場に着こうとしていた。「人が沢山いるんだから、我慢しなさい」男の子は外が見たいのだ。「じゃあ靴を脱いで・・まったく」高田馬場ホームで構内アナウンスをしていたのは、頭に白い物が大分目立つ駅員だった。駅長さんかな?とも思える風格だった。型通りのアナウンスを終えて、電車は出発しようとしていた。目の前にいたその駅員が、窓越しの男の子にマイクを向けた。「ほら、なにか言ってごらん」そう言っているようなホームの顔は、笑っていた。男の子は、キョトンとしていた。お母さんに向けたその顔が、ほころんだ。お母さんもほころんだ。車内が柔らかくなった。ガラスの内と外で「バイバイ」が交わされた。通過途中の窓に桜が見えた。五分咲きのその花びらを、お日様が照らした。良い一日の予感がした。
2004年03月25日

悪強情・・

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「あれっ、ここにあったカレーは?」昼近く、やっと起きて来た師匠が聞いた「あっ・・いただきました」昨晩のカレーに味が染み込んでトロミを増す、それが大好きな師匠だった。「いただくのは良いけどさ、まだ大分あっただろ」確かに寸胴に1/3程は残っていた「ええ、もうあれだけ食べるのに、ご飯何杯食べたか分かりません」「・・?・・」「兄弟子に言われたんです。出された物は残すなって」「・・?・・」あの細い身体のどこに入るんだろうか、よく食べた。真打披露はお祭り騒ぎ。「昨日まで毎晩のみ続けて疲れたからさ、今日は『更科』でそばってのはどう?」「いいっすねえ」総勢10数人がひしめく座敷になった「なにやかやと頼んでもまとまらないからさ、取り合えず親子丼なんてどう?」「いいっすねえ」「親子丼!人数分」声が飛んだ「出来る間に、チョット飲もうか?」「いいっすねえ」ご馳走になる方の返事は決まっていた。「そば10枚で・・さ・・1万円・・乗らない?」「いいっすねえ」二人が答えた。志ん馬と志ん上だった。「親子丼が来るんだったなあ、やっぱり無理かな」「じゃあ、親子丼+盛りそば5枚でどうですか?」初めて違う返事が来た。2万円取られた。志ん上が言った「一時はどうなるかと思いましたよ。だって、2時間前に立ち食いで、天玉そばとおにぎり3個食べたばかりだったんで」「・・・」言葉がなかった。志ん上は食べて食べて、やっと、ひな太郎になった。
2004年03月24日

三遊亭円之助という師匠

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「辰巳の辻占か、ウチに来な」円之助師匠の家は下赤塚、東武東上線だった。稽古はあっという間に終わった「寄席は?」「池袋の夜です」「じゃあ、俺と一緒だ。まだいいな」「ハイ」「飯でも食ってけ」「ありがとうございます」「カレーだよ」「ご馳走さまです」「ご馳走かなあ」ボンカレーだった「一杯やるか?」「でも、前座ですから」「まあ、そう言うな、一人で飲んでもつまらないからさ」「ご馳走になります」大きな大きなコップだった。日本酒がなみなみと注がれた「これこれ・・」キューっと飲む、置いたコップには、酒が半分も残っていなかった。同じようにした。そうしないと、いけないと思っていた「もう一杯飲むか」「いえ、もう結構です」言うのが精一杯だった。下赤塚の駅まで、歩いて10分。途中に自動販売機があった「飲むか?」「・・・」首を振った。話せなかった。ワンカップ大関のキャップを手馴れた手付きで開ける、ぐびりっ・・・駅に着く頃に、丁度なくなった。電車に揺られて池袋。演芸場の隣に酒屋があった「これは付合えよ」升の隅から一気に飲んだ。楽屋に入って追い出しまで、厠に入っていた。