今日の新書は井手英策著「18歳からの格差論」東洋経済新報社をとりあげる。

著者は財政学者だが、税と政策についてイラストも入れて、実にわかりやすく解説していて大人の絵本のように気楽に読める。
しかし、内容はかなり濃く、日本社会を①再配分の罠、②自己責任の罠、③必要ギャップの罠という3つの罠に分断された社会と捉え、その処方の方向性「必要の政治」を示している。そのことは著者がまえがきに書いている「人間が誰でも必要とするサービスを政府が保障し、みんなががんばるチャンスにめぐまれ、堂々と競いあえる社会ーーつまり、がんばるための土台をみんなの税で支え、競い合いの勝者に拍手を送り、敗者に思いやりを持てる社会を目指す・・・そんな思いを浮かべてこの本を書いた」に示されている。
是非、幅広く読んでほしい推薦の本だ。


AD
今日は寒いくらいの涼しい日で画廊まわりをしたいが自宅待機日なので読書。

今日の新書は茂木誠著「ニュースのなぜ?は世界史に学べ」SB新書。

現在の国際問題の100の疑問を世界史的な視点からわかりやすく解説した本で、これからの国際的なニュースを見る上でおおいに役にたつ。





AD

「作品と価格の関係」

テーマ:
先日は作品と価格について小泉さんからコレクターとしての文章を紹介しましたが、今度は画廊主であり作家でもある視点からの小原さんの文章を紹介させていただきます。
ちょっと長いですが面白く分かりやすいので、特に若い作家さんはぜひお読みください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「作品と価格の関係」
小原 聖史·2016年7月5日

大勢の作家さんで構成する企画グループ展の場合、たいてい毎回のように、 複数の方から値段設定に関する質問を受ける。お客さんではなく、作家さん から。また、価格に関するコレクターさんの記事などもよく見かけもする。 これまで何度か書いてきたことでもあり、多少重複することもあるけど、 画廊主でもあり作家でもあるその視点から、値段に対する自分の所感を 自分なりにしるしておきたいと思う。 美術作品の値段というものは、一般のお客さんからみても、非常にわかりづらい もので、なんでこんな値段するのだろうと思う場合もあるだろう。 まだ、骨董品のように、たとえば、切手やコインのように、ある程度、相場が決まって いるものなら、ちょっと調べれば、あ、これはこのくらいの値段と知ることもできるし、 価値基準も、たとえば明治初期に少量だけ発行されたものと、昭和の初めにある程度 発行されたものなら、同じ切手やコインでもあきらかに明治のほうが高くて当然、 このくらいはするもんだろうと判断もつきやすいものではある。 絵の場合でも、もちろん、すでに物故作家となっていて、すでに一定の評価相場が ついてる作家の絵なら、やはり比較的にその価格帯を知るのは容易いし、判断も つきやすい。実際に、市場でそういう値段で売れてるからそういう値段になるという 市場の根拠もあるわけで。。しかし、現代作家で、まだ活動数年の若い作家の場合で、 さらには作家自身も販売実績が十分にない場合、作家自身も値段を設定しずらい ものである。もちろん、すごい労力をかけて生み出した作品ならそれなりの値段 にしたいという想いもあるのだろうけど、けっして、(それで売れればいいだろうけど、)それに比例することはない。ある作品を制作して、それに1〜2ヶ月も時間がかかった からといって、一般的な1〜2ヶ月分くらいの給料に値するような値段はそもそも つけることもできない。また、物故作家の作品をみて、なんでこんな絵がこんな 値段・・と思うことがあるように、けっして、絵は上手くかけたから、その技術に 応じて、高額で売れるというわけでもない。また日本でトップクラスクラスの公募団体で 入選したり、その会員というだけで、一作家としての個展ではぜんぜん売れないと いう場合もあるし、素人から見たら一見、落書きのように思えるような作家の作品が けっこういい値段でたくさんの方に購入されていくケースの場合もある。 市場(しじょう)とは、人気に大きく左右される世界でもあり、結局、欲しいと 思ってくれる人がたくさんいなければ、けっして値段があがっていくこともなく、 いくら自分の気持ちだけで高く値段設定しても、いつまでも売れない状態が続くことも じゅうぶんにあるだろう。 自分でただ描いているだけでなく、個展なりグループ展なりその他アートイベントなり、 市場に作品を出すということは、そういうことになります。 いくら売り絵でない、別に売るために描いてはないといっても、そしてもちろん そういう心情であっても、あくまで「値段」という現実はそういうものです。 こうしたことは、まず画廊主として、これまでたくさんの現場をみてきた視点で書いています。。やはり、先ほど触れたように、作家としては、まず「販売実績」に応じて 値段をつけていくのが一番のぞましいと思います。どこの美術系の学校を出てるからとか、 どこの会員であるからとか、はたまや制作時間やさまざまなコストで、作品の値段を 考えるのではなく。。で、まだそれほど、販売実績や経験がない場合だけど・・・ たとえばA4サイズくらい、キャンバスでいえばサムホールといいますが、そのくらいの サイズの作品で、かりに10000円でつけたとします。そして親類などでなく、 一般のお客さんに二度三度、その値段で売れたとします。それはもう実績です。 そのくらいの値段なら十分に欲しいというユーザーが複数いる、という実績になり ます。もちろん、それではぜんぜん、本来の制作費・出品費などに見合わないとします。 そして、その後のグループ展では13000円ほどで出すとします。また売れます、 次は15000円で出す、また売れたら、じゃ、次は20000円で。。。と、そんな 感じで値段をあげていくべきで、それが実績に基づいた値段設定のあり方です。 なんの実績もないのに、いきなり1ヶ月も制作に時間がかかった、大変だった、 思い入れもある、、といって、いきなりそのサムホールを5万で売りはじめても、 いつまでたっても、そういう値段設定のあり方の場合、ほどんど多くの作家が いつまでも売れない状態でやっていくことになるでしょう。。 少なくとも最初の2〜3年は、宣伝費みたいなものだと考えてやっていたほうが、 作家として発展していきやすいと思います。現場をみてきて。。 それにどんなことも、売るのにはお金がかかります。仮にラーメン屋をしたいとして、 そしてラーメン売るのには、まずテナントを借りて、厨房などの設備にお金をかけ、 電気代、看板代・・などを使い、場合によって人も雇い、そうしてラーメンが 売れるわけです。最初は元などとれません。また食べる側も、ラーメンなんて 原価100円もしないかも、ここの800円もする!、なんて単純にいう人いますが、 それは認識や考え方が浅すぎます。。。小さい個人事業から大会社にいたるまで、 そんな風に、「売る」というのはたいへんな労力とコストがかかるものです。 初期投資に500万かかったからといって、一杯のラーメンを数千円に販売するわけには いきません。ずっと続けていくなかで、元をとっていくしかありません。 作家もしかりではないでしょうか。なので、こんなに勉強もしてきたし、 のべ30時間もかけて作品つくったのに、1万なら、時給あたり300円ほど じゃないかといっても、本来、そういうものなのです。 今をときめく、村上隆さんや奈良美智さんだって、最初はずいぶんと安い値段で、 はじめから数千万、数億で作品が売れたわけではありません(笑)。 画廊をしていて、さきほどいったサムホールサイズなどの小品でも、10万円以上で、 会期初日ですぐ売れてしまうような作家さんもこれまで何人かはいらっしゃいますが、 やはり最初は1万とか、そういう値段からスタートし、5年、10年、15年 というそういう月日のなかで着実にプロ作家としての実績をあげてこられたわけ で、けっして最初から、そういう小品が10万15万で売れていたわけではありません。 これが販売実績にもとづいた値段のあり方というもので、自分の感覚や気持ちだけで (実績もない場合)いきなり高額な値段でスタートする人の多くは、のちのちに いつまでも何年たってもまったく売れない=まったく誰からも評価されない という気分に陥りやすく、さらには、貸し画廊では作品発表ができても、実績が ないと、どの画廊からも招待展や招待出品で作品展示される機会がないまま、 作家として精神的にも経済的にも潰れていく場合がわりとあるものです。 もちろん、やたら、メンタルが強くて、「そんなのカンケーない」(笑)と、 マイプライスで売れようが売れまいが関係なくやっていける人ならそれはそれで いいのですが。。。なので、作家さんで、「どう値段をつけていいのか、 わからない」という場合、そんな風なスタンスでまず値段をつけらてゆくと いいと思います。あくまで売り出し中のサービス宣伝価格として。 額に五千円かかってるし、制作に1週間もかかったから、、とかいう考え方 ではなくて。。。ともあれ、高く設定するのは、自分が製造者だから簡単 だけど、あまりにいつまでも売れないと、急に値段下げざるをえなくなり、 それもまた評価を落とす原因にもなりかねます。 いずれにせよ、作家として多くの人に認められていくようになれば、 自分では、この小品3万くらいで十分!とおもっていても、画廊側が それでは安すぎますよ、とか言って、そして実際、5万6万でも、複数のお客さんが それを喜んで購入する、という流れになっていく人はいくもので、場所とか 関係なく、東京でやっても、九州でやっても、海外でやっても、売れる時は それなりの値段で売れるという作家になっていくものです。 実績とか評価というものはそういうものですし。もちろん作家の誰もがそうなる というわけではありませんが。。 ともあれ、安ければいいというわけでなく、最初は安いところから、多くの人に 自分の作品世界をひろげていって、多くのファンを作り、その実績に応じて 値段もあがっていくのが美術作作品、作家作品の価格というものと思います。 ※ここでは、あくまで「値段」ということについて、活動していくうえでの さまざまな視点や角度から論じさせてもらいました。 こういうことを書くと、これまでも、一部の人に、売れればいいのか、とか、 芸術は純粋なものだ、などとそうした趣旨でコメントを書きこまれることが 幾度かありましたが、そんな単純なことはわかりきっており、あくまで、 若いこれからの作家が、アートの市場のなかで、「作家活動」というものを していくうえでの、一般的な状況のなかでの「値段」のつけ方という点を 現実的な参考になればと思いアドバイスしたく、画廊・作家としての立場から 論じたものなので、そういう精神論的なコメントはたとえ入っても 答えることができませんのでご了承ください。
AD