2012-03-16 22:30:57

★鈴木明子選手の誕生日を見て思う。

テーマ:フィギュアスケート
$浅田真央ファン夢日記トリノ五輪で金メダリストとなった荒川静香さんは、現在アイスショーで活躍している。彼女のファンの言うところによれば、技術的にも少しも現役当時と比べ衰えていないという。そして表現面でいったら、現在の方が現役時代よりも向上していると評価されているそうだ。

鈴木明子選手の誕生日を日本スケート連盟のホームページで確認したら彼女は1985年3月28日生まれである。ということはソチ五輪を2014年2月とすれば、そのとき28歳と11月で、ほとんど29歳になろうという年齢だ。フィギュア選手もやろうという気持ちさえあれば、かなり長い選手期間を維持できるということである。

これには、鈴木選手がソチ五輪に向けて力を込めて練習にはげんでいるということが前提になるが、彼女がソチ五輪をめざしていることは100%確実であろう(注)。鈴木選手を見ていると、やはり自分の気持ちの中に競技への情熱の炎が激しく燃え盛っているのだろう。きっとそれが燃え尽きるまでは彼女自身の気持ちにけりを付けることができないのかもしれない、と想像する。

旭化成の最近のCMでバレリーナのアーラ・オシュペンコさんが登場しているが、CMのナレーションによれば彼女は79歳である。まあ、これなどは特別中の特別かもしれないが、しかし、女性の運動能力において加齢は決して障害ではないのだということの証左にはなると思う。

またスピードスケートでは、岡崎朋美選手が子供を出産してからも競技に臨んでいる。岡崎選手は1971年9月7日生まれで現在40歳である。スピードスケートでは、高齢の女子選手が現役で活躍している例が特にヨーロッパの選手に見られるそうで、今後もこうした傾向は加速するとみられている。

こうした先達の例を見ると、フィギュアスケートの選手は競技への参加をあきらめるのが早いのではないかという気になってくる。

私が女子フィギュアでの高齢選手(他にいい言葉が見つからない)に期待するのは、選手の、特に表現面での充実した演技を期待するからである。もちろん、低年齢の選手のキビキビした初々しい演技も魅力だが、25歳を過ぎて芸術性が高まった演技が五輪で花開くのを見てみたい気もするのだ。そしてこうした高齢の女子選手が現役を続けることによって、競技自体も変わって行くのではないかという予感もするのである。

フィギュアスケートはTES(技術点)に見られるように、運動能力を競う面が多分にある。だから選手生命が短いのかと考えるが、鈴木選手などを見ていると、25歳を過ぎても決して運動能力が十代の選手に劣っているわけではないと言えると思う。事実、鈴木選手は今シーズン初めて3回転+3回転に成功するなど、技術面での向上に衰えを見せていない。ネットの情報によれば、むしろ今後今回成功した3T+3Tを越えて3F+3Tや3Lz+3Tなどを視野に入れて練習を重ねていると聞く。

そこで過去の有名選手ということで、ミシェル・クワンの世界レベルの戦績を見てみたら、93~94年シーズンに世界ジュニアに初登場して優勝し、04~05年シーズンの世界選手権4位で終わっている。そして、05~06年のトリノ五輪は直前に棄権している。クワン選手の誕生日は1980年7月7日だから、従って現役の期間は13歳から24歳で約12年である。クワン選手の場合、この現役の期間で、五輪で銀、銅を獲得しているほか、五度の世界選手権優勝という輝かしい実績を残している。

また荒川静香さんの場合は誕生日は1981年12月29日である。世界ジュニアに登場したのは94~95年シーズンでこの時13歳。8位となった。そして2006年のトリノ五輪で優勝し、そこで引退している。この時24歳である。従って現役として活躍したのは12年間。

こうしてみると、フィギュアスケートの選手として競技で活躍できるのは10年前後という期間限定の法則を感じてしまう。これはどういうことなのだろうか? 競技者として技術の限界に挑戦したり、同じことを限りなく繰り返して行うことに何の違和感も感じることなく情熱を持って練習できるのに年齢的な制限でもあるだろうか?

フィギュアスケート以外の、例えばマラソン選手の場合は、30歳を過ぎても活躍する選手は多い。マラソン選手の場合、もちろんジムで筋力トレーニングを行うことはあるが、基本は走ることである。一般人から見たら気の遠くなるような距離をただ走るという練習を繰り返す。そこには単調さもあるだろう。しかし、年齢からくる飽きを選手からは感じられないことが多い。前述したスピードスケートの岡崎朋美選手の場合でも、練習にはただ滑るという同じことを繰り返すことが求められているだろう。そして、マラソンでもスピードスケートでも、選手によってはその単調さにそのスポーツの奥深さを感じているのではないかとさえ思わせる節も見られるのだ。

フィギュアスケートの選手の場合、世界で活躍する以前、4,5歳からスケート靴をはき練習を積んでいる。だからトータル20年という期間になる。そういうことが、24,5歳を上限として引退する選手が多い理由なのか。世界へ出て10年を境にして燃え尽きる何か理由があるのだろうか。ここまで書いて来て、もしかしたら選手がこれ以上の成績を上げることができないと悟ったときに競技を見限るのかと感じたが、いずれにしても私には謎である。

*写真は2009年「Festa On Ice」から(ウィキペディアより)

【追記】

あとから思いついたが、私は経済の問題を全く考えていなかった。経済的な側面を考慮すべきかもしれない。

注:アンコウは鈴木選手がソチを目指していることは100%確実であろう、と書いたが、最新の鈴木選手に対するインタビューで鈴木選手は次のように言っている。(2012、3月22日、産経新聞)

--2014年にソチ五輪が迫っています

 「実際のところ、ソチまでのビジョンはまだ考えていないし、簡単に『ソチを目指します』とも言えません。世界選手権をどんな気持ちで終えるかだと思う。やりきれたと思ったら(現役を)終わるし、もうちょっとさらに上にいきたいなと思ったらやる。まだ、スケートが楽しくなってきている気持ちはある」


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2012-03-14 23:04:56

★カロリーナ・コストナー選手の戦術を見る

テーマ:フィギュアスケート
先日、オランダのハーグで行われた、インターナショナル・チャレンジ・カップで、カロリーナ・コストナー選手が優勝した。成績はショートが64.89、フリーが132.84で総合得点は197.73である。ISUの試合日程表をみると、この大会は(注)言わばB級国際試合である。しかし、コストナー選手は、フリーで132.84を上げ、かなりの高得点を獲得している。そして、このフリーのプロトコルを見ると、それほど高難度の技で演技しなくてもこんなに高得点が取れるのだということが解る。
 
$浅田真央ファン夢日記


こんなことを書いたら、コストナーファンに叱られそうだが、そして私自身もコストナー選手は嫌いではないのでけなすことはしたくないのだが、この表をみると、まず、

1 3回転+3回転がない。
2 3Lzが入っていない。
3 3連続ジャンプが入っていない。

ということが目に付く。確かに基礎点は52.86で高いとは言えない。しかし、GOEは9.04で高得点である。しかも、2AでマイナスのGOEをもらっていてこの得点である。まさに省エネ・高効率である。技術点(TES)は61.90であり、この程度の技で61.90なら上々と言えよう。

そして、今後のことについては、最後のスピン二つでいずれもレベル2であり、伸びしろがあることを考えると今後に期待が持てる。

欧州選手権はどうだったのかなと振り返ってみたら、3Sから始まる3連続ジャンプはあるものの小さなミスをしていて、この辺が、今回3連続ジャンプを入れていない理由かと思う。また、欧州選手権でも3Lz入れていない。コストナー選手、3Lz苦手だったかな?技術点(TES)は56.29で今回のチャレンジカップより低い。

$浅田真央ファン夢日記


つぎに、チャレンジカップのPCSを見たら、ショートが34.12で平均8.53である。ショートのSSを見ると、8.50とかなり高い得点を獲得している。欧州選手権でのショートのPCSはどうだったかを見ると、PCSは30.95でまずまずだがSSは7.71とそれほどでもない。

さらにフリーを見るとチャレンジカップは表の通り、SSが8.67でPCSは70.94である。五項目平均は8.87とかなり高い。SSは8.67で、欧州選手権のフリーのSS7.89より大幅アップとなっている。

こうしてみてくると、世界選手権のときどうなるのだろうか?と考えてみた場合、あくまで推測だが、やはり技の難易度はそれほどアップしないように感じる。3+3は入れないだろうし、3Lzもないだろう。真央選手のようにコストナー選手がレベルアップを宣言しているのなら別だが、そうでないのなら現状を踏襲すると思われる。

だから結局、コストナー選手の生命線はPCSとなる。今回、B級国際試合で、一般ジャッジの数も5名と少ないような試合であったが、コストナー選手はフリーのPCSで70点を超す得点を獲得したことは自信につながったに違いあるまい。そして、ここにまたアシュリー・ワグナー選手に続いて、難易度を落とし完成度で勝負する選手が世界選手権に現れることになったと言えるだろう。

(注)最初、アンコウはチャレンジカップはISU非公認と書きましたが、読者のyuriさんから、チャレンジカップはISU公認との指摘がありました。お詫びして訂正します。アンコウは、ISUのカレンダーを見て、GPシリーズや欧州選手権、四大陸選手権、世界選手権には大会名の前にISUのマークが付いているのに、チャレンジカップにはマークが付いていないので非公認と勘違いしてしまったわけです。いずれにしてもマークが付いている大会より格下であるとは思います。




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2012-03-11 00:32:30

★現実の政治力とは? 読者・きれじろうさんのコメント

テーマ:フィギュアスケート
先日、「城田憲子のフィギュアの世界」を紹介した中で、国際会議でのロビー活動や政治力についての記事を書いたが、これについて、読者のきれじろうさんからコメントを2通頂いた。これが、実に面白く、現実のロビー活動はこんな感じなのではないかと思わせるものとなっています。なお2通のコメントは記事にするにあたり、一つの文章に改編しています。


≪(今回、フィギュアスケートの国際会議におけるロビー活動や政治力について話題になっていますが、)少し違った視点で書きます。

私は以前営業をやっていましたが、受注を取るためにはなりふり構わずでした。
まず、お客様の現状分析を徹底的に行い、提案を行います。当然良好な人間関係も作り上げます。
そして、当然のことながら数社の競合になりますが、時には「競合他社の××が弱い」「あの会社の提案ではシステム導入時にトラブルを起こす可能性がありますよ」などと告発じみたこともやりました。
(露骨にではなくさりげなく会話の中にもぐりこませるのですが)

競合、競争という状況が発生したら、人はどうしてもそうなってしまうのであり、綺麗ごとだけでは勝てないのです。(勿論綺麗ごとだけで済むのなら、えげつない事はしません。)
ですので、田村さんが著作で書かれていたバンクーバー五輪時の米国ジャッジのEメールの件(注)は、私の感覚からすれば、「そのくらいやっても不思議ではない」でした。

ただし、ちょっとだけ補足すれば、Eメールの件を「汚い」と思った方が多いかもしれませんが、私はどう思ったかというと、
「Eメールなどというログとして残るものを使うなんてアホか。記録に残らない会話にしときゃよかったのに。もっと頭使えよ。」
でした。
私が日本スケ連の職員だったら、なるべき露見しないように注意を払いつつ、日本選手に有利にするために似たようなことをやったかもしれません。

それを含めての政治力だと私は思っています。

日本スケ連は城田さんが抜けた後、腑抜け集団になってしまった印象がありましたが、バンクーバー後、日本スケ連の主導でショートでの3Aを認めさせました。恐らく事前に各国にかなりの根回しを行っていた筈です。
どうやったら自分の望む状況に持っていくことが出来るか、どうやったら自分たちの思惑を「正論」「理想論」というオブラートに包んでその気にさせるか、日本スケ連には頑張ってほしいですね。≫


どうでしょう。現実のロビー活動、政治力がありありと浮かんでくると思います。そして、これが重要なことですが、きれじろうさんのコメントが、〝悪〟とは一線を画していることです。ここを見逃さないで頂きたいです。


(注)=バンクーバー五輪の、プルシェンコに関わるEメール事件。五輪直前にライサチェクの振付師ローリー・ニコルの友人で、アメリカ人ジャッジのジョゼフ・インマンが、「プルシェンコの演技構成点を下げるように」と読める内容のEメールを60人の同僚ジャッジに送信したことが発覚し、欧州と北米で大騒動になったスキャンダルのこと。しかしロシアスケート連盟はこれに抗議はしないと決定した。


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2012-03-09 15:17:21

★競技の前線で戦っているコーチの言葉は重い。

テーマ:フィギュアスケート
城田憲子のフィギュアの世界の最新版がネット上に出ている。

http://hochi.yomiuri.co.jp/column/shirota/news/20120309-OHT1T00012.htm

今回は佐藤信夫・久美子コーチ夫妻を招いてのトークだ。三人とも本当に長い付き合いで、出会いから話しているのだが、なかなか現在のフィギュア界についての話には至らず、今回は昔話に終わっている。

しかし、そんな昔話ではあるが、「おっ」と思えるような話が出ている。次の個所だ。


≪城田「でも信夫先生、世界選手権のコンパルソリーで4番だったことがあるでしょう?」

信夫氏「あの時(66年)は総合で5番」

城田「でもね、あの頃の世界で5番、本当はもっとすごいのよ。まだまだ『日本だから』5番、だったわけで」

信夫氏「まだまだ『日本』はブランドじゃなかったからね。なかなか高くは買ってもらえなかった(笑)」

城田「信夫ちゃんの本当の実力は、もっと上だったと思うのね。日本は政治力もまだまだだったし、ロビー活動も出来なかった」

久美子氏「まだ英語がしゃべれる人も少なかったよね。やっぱりそういう時代」≫


これは見過ごせない話である。信夫コーチが現役のころは、『日本』はブランドじゃなかった、というのである。だから、高くは買ってもらえなかった、というのである。つまり裏を返せば、これは、フィギュアスケートにはブランド力が必要だということである。採点競技の宿命として、ジャッジに日本選手の良さがブランド力を持って評価されていることが大事であると言っているわけである。つまり、『日本』というブランドを確立することがどうしても必要なのだと言っているのだ。

フィギュアスケート競技の前線で戦っている佐藤コーチがこう言っているのである。フィギュアスケートに関心を持ち続けていれば、たとえファンであっても、フィギュアスケートの採点において、ブランド力が根底で影響していることは感じる。そして、その感じは決して誤っているものではなく、前線で戦っている佐藤コーチのような方でも感じていることなのだ。

このようなブランドの確立は選手個人についても言えることであろう。P・チャン選手のSSにみられるように、滑れば高得点をもらえるブランドは、ファンのなぜ?という疑問を越えて存在している。

そして、話は城田さんと佐藤夫妻の話にもどるが、信夫コーチの話に続く城田さんの言葉が注目である。城田さんは、


>「信夫ちゃんの本当の実力は、もっと上だったと思うのね。日本は政治力もまだまだだったし、ロビー活動も出来なかった」


と言っている。城田さんのこの言葉は重い。フィギュアスケートでジャッジに本当の実力を評価させるためには政治力が必要だと言っているのである。そのためのロビー活動が必要だと言っているのである。城田さんの現実主義者としての一面が出ていて、これも注目させる。

少し前の話だが、テレビ朝日の報道ステーションでISUの平松純子さんをリポートした特集があった。リポートした宮島さんのもくろみとしては、平松さんの活躍を前面に押し出す特集にしたかったようだが、私の印象としては、日本スケート連盟が、平松さんを通じてISUの動静を知ろうとしていることや、日本スケ連が国際的な競技の場でイニシアチブ取って行くつもりであることなどが前面に出た特集であったような気がする。日本スケート連盟も国際的な場での政治的力学やロビー活動を重視しているのだ。

このように政治的力学、ロビー活動などと言うと、すぐに〝よくある陰謀論〟と結びつけてしまう読者がいるかもしれないが、私が言っているのは陰謀論ではない。なぜなら陰謀を辞書で引くと、

陰謀=ひそかにたくらむはかりごと。法律的には二人以上の者が犯罪行為を謀議すること(広辞苑)
陰謀=ひそかにたくらむ悪いはかりごと。(岩波国語辞典)

とある。要するに陰謀には悪の要素は入っているのだ。だから陰謀と通常のロビー活動とは厳しく区分けすることが必要である。国際会議において、ロビー活動は必須の要件なのである。なぜなら、国際会議は〝正論〟のぶつかり合いなのであるからだ。確かに、人が三人集まれば政治力学が働くのである。そうした自然現象はしっかりと見すえなければならないと思う。

私は、佐藤コーチがこうしたフィギュアスケートにおけるブランド力や政治的力学に敏感であることに頼もしさを感じる。思えば今シーズン前半、真央選手の3アクセルがまだ未完成とみるや、真央選手に演技に取り入れることを控えさせたのも真央選手のブランド確立の意思がその根底にあったとも取れる。

ソチ五輪まであと二年。今年の6月にはISUの総会が開かれる。そこでどのようなルール改正が行われるのか行われないのか?日本スケート連盟としても指をくわえて見ているだけではあるまい。健闘を期待したい。

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2012-03-08 15:26:33

★新たな3アクセル挑戦者が出てきたことで・・・。

テーマ:フィギュアスケート
ロシアのトゥクタミシェワ選手が世界ジュニアに出場しないことが、先日話題になった。その理由はトゥクタミシェワ選手が3アクセルを習得することに力と時間を注ぎたいためであると、彼女のコーチであるミーシン氏やスヴェトラーナ・ヴェレテンニコワ氏らのスタッフ陣がコメントした。ソチ五輪へ向けて臨戦態勢を整えている様子がありありとうかがえる。

そして、ロシアの新星J・リプニツカヤ選手も世界ジュニアのインタビューの席上、来シーズンから3アクセルを導入すべく練習に入ることを明言したそうだ。来シーズンは女子シングルでの3アクセル導入が注目の一つとなるだろう。

今まで3アクセルを跳ぶ選手が真央選手以外いなかったのは、3アクセルが女子選手にとって超高難度のジャンプであることが選手達に3アクセルへの挑戦を敬遠させたわけである。

では、ここに来てなぜ出てきたのかという理由だが、それは、バンクーバー五輪のときと違い、ショートプログラムで単発の3アクセルが使えることになったことだ。これによって規定にあるアクセルジャンプを3アクセルで跳ぶことができるようになったことは大きい。もちろん成功しなければたいした意味はないわけだが、これによって2アクセルを跳ぶ選手と、3アクセルを跳ぶ選手とは基礎点で5.20の得点差が出ることになったわけである。この差は見過ごせない。

なぜ単発のアクセルジャンプで3アクセルが跳べると有利であるかというと、以前のように、ショートのアクセルジャンプで2アクセルとの規定があったときには、3アクセル入りのコンビネーションジャンプは3A+2Tにしたわけだが、これは他の3+3と大きな得点差はなかった。組み合わせによっては、3Lz+3Tなどより基礎点は低かったのでメリットは低かったと言える。

実際、バンクーバー五輪のときは3アクセルを跳ぶとき、3回のうち2回はコンビネーションにしなければならなかったが、その配点を見ると、

3A+2T=8.20+1.30=9.50

であった。これは、例えば

3Lz+3T=6.00+4.00=10.00

と比較しても配点は低くメリットは少なかったわけである。現在の配点でも、

3A+2T=8.50+1.30=9.80

で、これは、

3Lz+3T=6.00+4.10=10.10

より、配点は低いのである。

しかし、現在は、ショート、フリー合わせて2回の単発3アクセルを跳べる。当然、ソチ五輪では2回の単発3アクセルを跳ぶことができるのだ。こうした背景があって、トゥクタミシェワ選手やリプニツカヤ選手が3アクセルへの挑戦を表明したのだと推測される。トゥクタミシェワ選手には3Lz+3Tがある。だから3アクセルが跳べれば、ショートでの技術点で大きなアドバンテージとなる。また、リプニツカヤ選手にはすべての3+3が跳べるという情報もあり、彼女も3アクセルが跳べればショート、フリーともに有利に戦えるだろう。

ただ、トゥクタミシェワ選手にしてもリプニツカヤ選手にしても、今から3アクセルを導入して、はたしてソチに間に合うかという問題もある。トゥクタミシェワ選手の場合、かなり前から3アクセルは跳べるという情報はあり、You Tube上で、彼女が3アクセルを跳ぶ様子が配信されていた。だから、トゥクタミシェワ陣営が3アクセル挑戦を正式表明したことは、満を持してというところかもしれない。

しかし、できるのであれば、なぜ今まで3アクセルを試合に入れて来なかったのかという疑問もないわけではない。それと、3アクセル導入で最も懸念されることは、練習時間の配分である。3アクセル完成にはかなりの時間がかかると思われる。だから、3アクセルにほかのジャンプや要素の練習の時間を取られてしまうのだ。これはかなり重大な問題で、例えば真央選手でさえ、バンクーバー五輪のときにはジャンプに大半の時間が取られていたことを告白している。

しかし、ここまで読み進めて来て、カンの良い読者はあることに気付いていると思う。それは、3A+2Tがコンビネーションジャンプとして得点のうま味がないというのであれば、男子選手が4回転+3回転と跳ぶように、女子シングルでも3A+3Tを跳んでくる選手が出てくるかもしれないということである。3A+3Tの得点は、

3A+3T=8.50+4.10=12.60

となる。この得点配分は魅力的だ。規定では、ショートとフリーを合わせて3回3アクセルを跳ぶことができる。現状では、女子選手にとって2A+3Tでさえかなり難度の高いジャンプコンビネーションである。だから、3A+3Tは夢のジャンプかもしれない。

事実、男子選手の3A+3Tでの最初の3Aの着氷の様子をみれば、強靭な足、とくに太ももでの確かな支えが必要であることがうかがえる。だから、女子選手の場合を考えてみると、3A+3Tは言うは易く行うは難しのジャンプかもしれない。しかし、アスリートは本来挑戦者である。壁を乗り越える気概を持つ人種なのだ。だから、3アクセルジャンパーが多く出てくれば、その中から3A+3Tを跳ぶ選手が出てくるだろうという気がするのである。

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