私は大学時代「吟道部」という、
詩吟のクラブに入っていました。
今では、詩吟と言えば「エロ詩吟」と言われてしまいますが
当時は硬派な部活で
それはそれは、おかしな先輩がいっぱいいました
高校まで私服だった私も
大学に行くようになって
制服、いわゆる学ランで登校することが多くなりました。
クラブには色々と「しきたり」があって
その中に後輩におごってもらう事は絶対してはならない
だから、喫茶店に行っても
必ず先輩が会計をします。
しかし、当時の我クラブの先輩は
ほとんどが地方から来た、苦学生で
余ったお金なんか全然持ってません
授業もそっちのけで、アルバイトに行ってる先輩が多かったです。
だから、先輩と喫茶店に行くのも
すごく気を使うのです
「ご注文お決まりでしょうか?」
「おう、畠山好きなもの注文しろよ」
そう言った先輩の目が鋭く光ります
「・・はい、じゃコーヒーを」
「おう、コーヒーでいいか?
わしゃ、今日は二日酔いで何にもいらんは」
『ええ~、俺一人で飲むの・・』
店員さんの嫌そうな目・・
「じゃ、コーヒーひとつですね?」
「おう」
『うわぁ~、お金ないんや』
しかし、先輩昨晩お酒をひとりで一升も飲んで
今日は二日酔いだと言います・・が
全然、元気そうです!
以前、後輩がピラフを注文して
眼まいがしたと、冗談で話していましたが・・
あながち、冗談でもなさそうです(苦笑)
それから、2・3時間
政治・文学・武勇伝など
タダのお水を何度もおかわりして、語り合います。
山口県の訛りもすっごく新鮮で
めちゃくちゃ、楽しくてすぐに時間が経ちます。
特に面白いのが、武勇伝
「わしゃ、ヤクザなんかちっとも怖くない
この前も、4・5人相手に・・・・」
「おお、すごいですね」
『実際見てないし・・分かりません』
他には
「鴨川も素足で渡りよるけんね」
「おお、すごいですね」
『実際見てないし・・分かりません』
しかし、
6月のお月見コンパの時
その勇姿を見ることになったのですが・・・
お酒を一気飲みして、フラフラになって
みんなが川原にダウンしてるとき
先輩が、急に元気よく立ち上がり
「でゃぁ~」
空手の正拳突きを4・5回気合を入れて皆に披露
(もちろん、先輩空手経験なし)
「では、私!これより鴨川を素足にて渡りきって見せます
参加者は私についてきなさい~」
ほとんどの者が、先輩の話も聞かず
近くの者と喋りこんでいます
気が付けば、先輩一人まだまだ寒い鴨川へ
履いていた靴と靴下が綺麗に置かれていました
こう見えて、わりと几帳面な先輩でした・・
2・3人がその光景を見ていました。
渡りきった先輩に
「やった~、すごい~」っと、
私は大きな声で声援を送っていたのですが・・
なんか、様子がおかしいです
対岸でうずくまったまま、動きません
あれ・・??
しばらくして
「はたけやま~、来てくれ~」
慌てて、対岸まで走っていくと
「ぎぇ~」
先輩の足のくるぶしの下から
大量の血・・大出血です!
「どうしたんですか!!」
「やられた・・」
どうやら、ワニに噛まれたのではなく・・
破れたビール瓶を踏んずけたようです。
「畠山、救急車呼んでくれ」
「ええええ~」
他の部員は全く知らず
近くの公衆電話から119番

病院に着くと、先生にアホな事をしてと
何度も怒られて、
「すみません」
私が、なぜか謝り・・・
結局、4針ほど縫って
赤チンで治療終わり
すると、先輩が
「先生、レントゲンも撮って下さい」
「どこか、痛いか?」
「いえ、何かあるといけないので」
「はいはい」
このへんが、几帳面な先輩です。
その後、会計で
「すまん、保険証を忘れたので
立て替えておいてくれ、月末には返す」
「分かりました」
私が、15000円立て替えて無事コンパ会場に戻りましたが
保険証がなくて私が立て替えるって・・なんか、変ですよね
翌朝
「昨日はやられたな~」
「大丈夫ですか?」
「おう、10針も縫ったがなんともない!」
『そんなに・・縫ってないいし』
「昨日の支払いいくらやった?」
「はい、15000円でした」
「なに~、ぶったくりやな、
なんでそんなに高いんや!!」
「いえいえ、保健なしでしたから高いですけど
保険証持っていけば、7割は帰って来ますよ
それにレントゲンまで撮ったから」
「レントゲン?あの医者にやられたな」
「いえいえ、先輩が撮ってくれって・・」
「えっ、わしが言ったか?」
「・・・・」
そのあと、小さい傷を皆に見せては
鴨川渡りの荒行を自慢してました
そんな、先輩が
大好きでした
もちろん、今も大好きですよ


