時代小説「天保騒乱」381 百瀬一太郎
テーマ:天保騒乱381
「面倒くせえから、お茶をかけてくれ」
「はい」
さらさらと、小吉は食べ終えてしまった。
「もう一杯いかがですか」
「そうだなあ、じゃあ、もういっぺえもらおう」
椀を渡すと、女は、ご飯を軽くよそった。
「お茶はどうします」
「おう、かけてくれ。ところで、おめえ、とめというのか」
椀を受け取って、小吉が尋ねた。
「いやだあ、お侍さん、私の名前を知ってるのか」
「さっき、小僧が言ってたじゃねえか」
「はあ、名前を覚えてくれたのか」
「覚えたんじゃなくて、聞こえたら、頭に残ってたんでえ」
「恥ずかしいや」
とめは、照れて、両手で両ほほを覆った。
「よし、飯は終わった。布団を敷いてくれ」
「あら、もう寝るのかえ」
「当たり前だ。おせえじゃねえか」
とめは、お膳を廊下に出して、布団を敷き始めた。見ると、尻をくねくねさせている。
<ちぇ、なんでえ、こいつは>
と、思いながらも、小吉は、さっさと着替えて、敷布団の上に倒れこんで、着布団を被った。
「じゃあ、おさむれえさん、行くからね。また、あとで来るから」
「うん」
<えっ、なんだって。何しにまた来るんだ。まあ、いいか、どうせ寝ちまうんだから、なんだっていいやい>
思った間もなく、あっという間に、眠りについた。






























