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                      $水本爽涼 歳時記-☆お知らせ☆ 幽パ

連載小説 『幽霊パッション』 現在、公開中!  次の曲もお聴き下さい。


            ♪流れ唄♪


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2012-05-24

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第三十回)

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  幽霊パッション 第三章    水本爽涼                                       
                                        水本爽涼 歳時記-幽パ③ 30
     第三十回
 そんな生半可な仕事をしているうちに昼となり、やがて退社時間となった。上山の心の中には、一日の中で漠然と考えた一つの発想が次第に具体化しつつあった。上山の足は、どうしたことか社屋の外へは向かわず、社長室へ進んでいた。その社長室へ上山が入ろうとしたとき、入口ドアを出ようとしていた田丸と、ばったり鉢合わせした。
「おっと! なんだ上山君か。どうかしたのかね? 私は今、帰ろうとしとったんだが、何か用かね?」
「いえ、ちょっと社長に云っておこうと思ったもので…。私、退職させてもらえないでしょうか!」
「なんだ、藪から棒に! 驚くじゃないか…。まあ、歩きながら話そう」
 上山の思いつめたような眼差しに、田丸は幾らか、たじろぎながら宥(なだ)めた。

 田丸の勧(すす)めで、二人は会社前の喫茶・キングダムへと入った。ウエイトレスが注文を訊(き)いて下がったあと、田丸が急(せ)くように話しだした。
「辞めるって、それは聞き捨てならんぞ。何かあったのかね? 仕事のトラブルとか…」
「いや、そうじゃないんです。社長もご存知の平林君絡(がら)みの話なんですよ」
「君が見えるという、死んだあの平林君関連かね」
「はい、その平林君絡みで…」
「詳しいその後の事情は分からんが、余り人前で素(す)に話せん話だわなあ…」
 田丸は上山と幽霊平林の経緯(いきさつ)を知る唯一の人間であった。
「ええ、この前、少し霊界のお偉方のことをお話ししたと思うんですが、その霊界番人という存在のご命令で、私と平林君のやろうとしたことにストップがかかりまして…」
「おお、地球温暖化阻止とか云っておった事案だったな、確か」
「はい、そうです。そうしないと、私の身が危ういのです」
「危ういとは?」
「私の身が人間界と霊界の狭間(はざま)へ閉じ込められる危険性があるのです。現に一度、警告のように閉じ込められました」

2012-05-23

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第二十九回)

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  幽霊パッション 第三章    水本爽涼                                       
                                       水本爽涼 歳時記-幽パ③ 29
     第二十九回
 列車が駅構内へ静かに止まると、上山は、「水、清ければ魚、棲(す)まず、か…」と、呟くように吐き捨て、座席を立った。
 その日は仕事が手につかない上山だった。幽霊平林とこれから何をすればいいのか…と、このことばかりが頭を離れない。
「課長! どうかされたんですか?」
 上山が課長席に座り、ふと我に帰ると、目の前には岬が立っていた。
「んっ! ああ、岬君か。何だね?」
「いや、いつでもよかったんですが…。妻が課長に、よろしくと云っていたもんで、忘れないうちに云っておこうと思いまして…」
「おお、そうか…。元気かい、亜沙美君、いや奥さんは?」
「はい、お蔭様で…。育児が大変ですが、頑張ってるようですよ」
「ほお、それはよかった…」
 上山は、幽霊平林とのことなど、すっかり忘れていた。
 岬が自席へ戻ったとき、上山は、ふと時計を見た。知らない間に十一時は、もう疾(と)うに過ぎていた。その時、上山の心に、考えるでなく、ある想いが巡った。人はなぜ機械を使うのか…。もちろんそれは、人が快適で便利な暮らしを育(はぐく)むためのものである。だが、今の世界の趨勢(すうせい)からして、果してそれが快適な暮らしを育むことになっているのだろうか…と。怠惰になるだけの、快楽を得るためだけの、自然を破壊するためだけの…道具になり下がっていはいないだろうか…と。だとすれば、人間はそれに気づき、地球上、唯一の考える葦として、全生命を代表する責務を果たさねばならないのではないか。霊界のお偉方が云っていた社会悪を滅するとは、正にそれではないだろうか…と。上山の思考は巡っていった。だから、机上のやっている仕事は形ばかりで、決裁印も無意識で押していた。
2012-05-22

連載小説 幽霊パッション 第三章 (第二十八回)

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  幽霊パッション 第三章    水本爽涼                                       

                                        水本爽涼 歳時記-幽パ③ 28
  
     第二十八回

「いや! それは、やめておこう。奴は奴だからな。迷惑はかけられん」
『その人は、元大臣でノーベル賞をとられた方じゃ?』
「ああ、そうだ。国民栄誉賞とかもな。今や名誉町民で、社長らしい」
『そんな偉い方なら、ましてや、ですね』
「ああ、そういうことだ。やはり、私達で考えよう」
『はい…』
 二人は、ふたたび押し黙り、考え始めた。
その後は結局、一時間ばかりが経過したが、これというアイデアは二人とも浮かばず、その日はお流れとなった。上山が、いいアイデアが出れば呼び出すということで二人(一人と一霊)は別れたのだが、非常に難易度が高い問題を解く感覚にも似て、二人にはまったく目星がついていなかった。
 次の朝、上山はいつもと同じ様に田丸工業へ出社し、幽霊平林は霊界の住処(すみか)で霊界万(よろず)集を前に熟考しながら漂っていた。上山は上山で通勤中もいいアイデアはないかと模索していた。この日は車を駐車場へ置き、態々(わざわざ)、時間がかかる電車で会社へ向かうくらいだった。すんなりと車で行けば事足りるのだが、時間をかけた背景には、運転の要を避け、神経を集中させたい思惑があったのである。
 霊界番人が云う無の社会悪、すなわち社会正義とは、ある意味、善を押し通す心の偏見ではないのか…と、電車に揺られながら上山は思った。人間は黒くもなく白くもなく、悪でもなく善でもない、その融け合う妙味ではないのか…と。どちらも極まれば、それはそれで間違いとなり、すべての人間が受け入れられないものになるに違いないと、また上山は巡った。云わば、人間の世界は適度な灰色で成立していて、その明度の限界値を越えれば、人はそれを社会悪として罰するのだと…。そう思いつつ、ふと上山が列車窓の風景に目を遣(や)れば、早や、降りる駅が近づいていた。

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