UC0085~ケルベルスの憂鬱

ガンダム・ジ・オリジンとオリジン公式外伝をベースに書いた、パラレルワールド2次作品です。忘れたころに気まぐれ更新。


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オレは色々な思いに堪えながら、足下のカバンから公用のノートパソコンを引っ張りだして準備を整えてから咳払いをひとつして、本題に入るべく気持ちを公務員モードに切り替える。

 

「ではガサツな役人らしく、ここからは少々ストレートにヒアリングさせてもらいます。

まず初めに、革命家ジオンの孤児であるあなたが何故バーリー家の"使用人"として福祉法人を始めようと思い至ったのです?」

 

やれやれ、ようやく役人らしい質問ができた。

 

「戦争が終わって除隊したあと一体なにをするべきか悩んだ末、自分自身孤児であるわたしにはこの道が一番よいのではと思って。一人で活動するのには限界もありますし、わたし自身の色々複雑な事情もあって、それを踏まえてでもバックアップしてくれる方を探していたところ、義理の父がまだ地球圏にいた頃に交流があったマダムの所へとたどりついたのです。」

 

複雑な事情については今からもう少しお伺いするとして、動機は一番よい道、ね。

オレは質問したことと回答をカチカチと端末に打ち込みつつ続ける。

 

「私の記憶が正しければですがアストライアはジオン・ズム・ダイクンの妻、あなたのお母様の名前ですよね?この地球上でも多くの人間がジオンという人物について結構詳しく知っています。お母様の名前を法人名にすることはあなたにも、バーリ家にとってもハイリスクじゃないですかね?」

 

決して意地悪で言ってるんじゃなくて真面目に心配してるんだよ。身の安全が第一である反面、隠して生活するのも結構しんどいってオレには判るよ、お嬢さん。

 

しばし沈黙。

 

「父が何を思ってコロニーに住む人々を導こうとしていたのか、母がどういう女(ひと)で父と何処でどう出会ったのか、わたし自身大人になってから知ったことも多くて…幼い頃の記憶の中の母は子守歌代わりにジャズを口ずさむようなところもあったけれど、それがとても上手だったことと、、何よりとても優しい人だったことは忘れられません。」

 

ジャズが子守歌代わり、渋い。いいね、うん…

 

「私達を養子にしたが為に巻き込まれなくてもよかったトラブルに巻き込まれながらも、わたしと兄を実の子供のように愛してくれた養父のテアボロ・マス氏の名前を、とも思ったのだけれど。ザビ家に利用されたとはいえ、実の父の名があまりにも悪いことばかり連想させる名前になってしまったことはやはり辛くて。」

 

…うん。

 

「だから、せめて運命に翻弄されてサイド3で寂しすぎる最期を迎えた母の名が人を救う為の、、特に子供達の救いの象徴になればよろこんでくれるのではないかと。」

 

「養父の名前はテアボロ・マス氏ですね?」

あえてドライにそう言うと、さっき受け取った書類の束を膝の上に乗っけ、指をちょいとなめてから用紙を繰り、サインの入ったものを見つけだして署名を確認する。セイラ・マス、ね。

 

オレは端末の回線がある種の要塞みたいなお城の中で圏外になっていないことを確認すると、本部にセイラ・マス女史と義理のオヤジさんのテアボロ氏の戸籍が現時点でどうなっているか、調べて返信するように電柱ノッポ宛にメールする。

 

「失礼、続けてください」

オレの入力待ちをしてくれていた彼女が続ける。

 

「レディ・バーリーはすべて承知の上でアストライアの名を使うことを認めてくださいました。それだけ強い意志があるのなら、亡き母のために必ずやりとげてみなさい、と。」

 

想像以上に覚悟決まってるのね。若いのに偉いよ、ネーちゃん。

その意志が無駄にならないようにオジサン全力で協力するよ。但しこのお屋敷を極力訪問しないで済む用件ならだけど、ね。

 

「あなたがアルテイシア様として、お母様の名前でこの事業を立ち上げたいというお気持ちは大変よく判りましたし尊重したいと思ってます。ただ、長官の紹介とは言えお役所手続きというのは面倒くさい所が色々ありまして‥」

 

間をつなぐために言いかけた時、ちょうど折り返しのメールが届く。

さすが、仕事が速い。

 

「あなたの現時点での戸籍がマス家にあることが確認でき、その件に関しては財団の立ち上げに問題ないことが確認出来ました。野暮なことを言って申し訳ないのですが、籍が分からないことにはいくらバーリー家や長官の後ろ盾があっても政府公認の財団としての認可が下りにくく、助成などの申告が出来なくなってしまう可能性がありますので。」

 

オレはそう言うと、そそくさと端末の電源を落としてカバンに放り込み、書類を封筒に納めて撤収の準備を始める。

 

「マス姓での申請は法的な手続き上の問題ですのでご希望であれば法人代表名としてアルテイシアを使用しても大丈夫でしょう。

形式上、一度保険局として上に書類とヒアリングの結果を提出して審査待ちすることになりますがバックアップもすばらしい所ですし、何より長官直々の紹介ですから心配しなくても確実に申請は降りると思います。」

 

アルテイシア様とお二人でこうしてお話し出来ることは光栄かつ悪い気はしないのだが、このお屋敷の雰囲気にはどうしても馴染めないオレは、ようやくここから脱出できる!と、逃亡を決め込む準備を始めたのだが、、

 

「ブレナンさん。訪問頂いたこの機会にもう一つお願いしたいことがあるのだけれど」

 

はい?ここに来て追加の用事ですか??

 

「認可がおりたら最初の仕事としてベルファストに行く予定なのですが、アドバイザーとして同行して頂けると助かるのだけれど」

「ベルファスト、ですか?」

「ええ、気になる幼い兄妹がいるんです。戦後早い時期に一度訪問はしたのだけれど、どうするのが一番良いのか判断に迷う所があって。財団の活動が本格化したら一番に何とかしたいので可能でしたら同行して頂いて色々助言して頂けると助かるのだけれど。」

 

…ん~、実をいうとオレもまだ駆け出しで、児童保護法人についての諸々は解らないことだらけなんだけどな…

 

「承知しました、そちらの都合に何とかあわせますので再度ご連絡頂ければ対応すべく努力はします。」

 

さっきの話聞いちゃったら断れないよなぁ、、長官の紹介でもあるしな、うん。案外頼られると断れない性格なんだよ、オレ。

 

入れなおしましょうか?という親切を丁寧かつきっぱりと断り、冷めきった紅茶を一気に飲み干し、お役所的フォーマットの挨拶をしっかりとして、やーっとひと仕事終わって帰れる、と浮足立つオレを見送るために駐車場までわざわざ見送りに来てくれたお嬢さんが

 

「あ、そうだ、ブレナンさん」

 

と唐突に口を開く。

まだ何か追加の相談でもあるのかと、びくびくしながら振り向くオレ

 

「宇宙空間での負傷兵の本格的な手当ては重力ブロックを持つ大きな船ですることが多いのです。だから大気圧ほどの力は無いにしても、調整次第で点滴することは可能なんです。」

「あの、その、大変勉強になりました。本日はこれにて、、」

 

オレの頓珍漢な質問に真面目に答えてくれたアルテイシア様に深く一礼して車に乗り込み、バーリーハウスを今度こそ離脱した。


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バーリー卿は旧世紀から「貴族のたしなみ」として福祉を中心にさまざまな社会貢献をしていらっしゃる。


んな事ぁイギリスに住んでる多くの人か知ってる。

金銭寄付だけでなく福祉施設の直接運営やそういうことを始めたい企業などへのアドバイザー派遣、人材確保と育成など十二分に尽力してらっしゃる。戦後の混乱続くこのご時世に復興の為に何かしらの救済活動を始めることは何ンも不自然ジャナイ。

判らンのはその先の話。

 今オレの前に紅茶と水を出してくれているこのネーちゃん。月の裏のほうからやってきたらしい、このネーちゃんの為に何故バーリー家のマダムはここまで尽力するのか?
実際に"仕掛けてきた"のはザビ家とは言え、多くの宇宙移民を感化したカリスマ革命家の娘の面倒を見るって福祉という優しげな言葉とは裏腹にリスク高過ぎなんだよね。

ジオン残党、連邦政府シンパ気取り双方から圧力かけられたり下手すりゃ恐喝されたりお屋敷襲撃されるリスクだってあるワケで…

―バーリー家にとっちゃ相当覚悟のいる「雇用」でしょ?

「ちょっと失礼…」

  彼女の性格そのものなのだろう、丁寧かつ几帳面に作られた計画書やら契約書類の類を一旦机の隅に置いてオレは横を向き、内ポケットから胃薬を取り出して口の中に一気に放り込んで水で流し込む。

粉薬のパサパサでムセそうになるのをぐっとこらえながらふと思う。

こんなことになるって判ってりゃ嫁にもっと強い薬を処方してもらったのに…。

 多くの保守的議員や官僚達と相反する考え方のオブライアン女史が、保健局局長という厚生庁の中でも上の方のポジションでいられるのはバーリー家を含む福祉や環境問題、人権なんかに関心が強い、地球圏の「善き」貴族や財閥の方々の大きな支持と後ろ盾があるからなんだよね。そういうアンバランスな所が巨大になりすぎたが故、一枚岩になれない連邦国家の面白い所でもあるんだが。

「アルティシア さん?」
「はい?」

緊張しすぎて声が若干ひっくりかえるオレ。
確認しなきゃならないことがいっぱいあるハズなのに、一体何から聴き取れればいいんだよ…

「あの、あなたはかの英雄部隊、ホワイトベース隊に従軍していたと噂されるジオン・ズム・ダイクンの孤児、アルティシア・ソム・ダイクン様でしょうか?私の記憶が正しければですが」
「ええ、その通りです」

拍子抜けするほどあっさりとお返事。

「えーっと、その、無重力の宇宙船では一体どのようにして点滴を落としていたのか、医療従事者としては気になる所でして…。そのー、あの大戦中にそんなに多くの輸液ポンプをすべての船が積んでいたとも思えませんし…」

ようやくオレの口から出たのは子供相談室レベルの質問。

お屋敷に着いてから並の想像力では絶対読めない話の流れの連続に完全にテンパっている俺を見て、ダイクンのお嬢様は堪えきれなくなったらしく小刻みに震えながら笑いだす。

「あの、、ごめんなさい。実はオブライアンさんから事前にあなたの情報を提供して頂いてたんですけど…おおげさにおしゃっていたのかと思ったら本当にそのままの方だから…」

はぁ…?

「長官は私のことを、何と?」

今度は苦笑を浮かべながら
「本人を前に言いにくいんですけど…」
「そこまで言ったのならはっきり言ってください。モヤモヤして今夜寝れなくなっちまいますから」
「セキュリティーチェックの為に送った写真を見て不安になるかもしれないけれど、、」

…人相が悪いのは自分でもよく存じておりますが、、

「荒っぽくてお調子者のヤンチャな青年がそのまま大人になったようなタイプだから初めは色々思うことがあるかもしれないけれど何というのか、根は見た目と違って…おそらくわたしの境遇を理解できる人だと思うからアドバイザーとしてとして適任だと、、」

 これでもおそらく目の前のお嬢さんは言葉選んでくれているんだろう。"あの方"のことだから実際はもっとストレートな表現だったのだろうな、絶対.。
堅気には見えないだとか、ヒール役のレスラーの類みたいなのだとか。




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それから数日後、俺はスーツの内ポケットに胃薬を忍ばせてバーリー・ハウスを訪問した。
本当は電柱小僧も巻き添えにするつもりだった、が、今日は一人で出向くようにという鬼畜のような課長の指示に、耐え難きを耐えて俺は素直に従った。

無事に門番のチェックをクリアし、お屋敷本館の応接室で、嫌な汗が背中をつたい、体中ガチガチで座っている俺の前にマダム・バーリーが現れた。
噂は知っていたが、旧世紀から続く真の貴族と言われるだけあって、俺のような半端モノを縮み上がらせるのに十分な貫録と風格を持ったレディだ。
「ミスター・ブレナン。あなたのお話はオブライアン保健局局長から直々に伺っております。」
「ええ…と、レディ・バーリー。保健局長からご指名頂きましたこと大変に光栄であります」

腹にも思っていない事を…。

「本日御足労頂いたのは私達が新しく始める孤児救済の福祉事業へのご協力ということはもうご存知?」
「はい、部長から直々に伺っております。私でお力になれるのか、いささか不安ではありますが」

腰が引けてる、逃げ道つくってるぞ、俺。

「ミス・アルティシア」
「はい」
俺は緊張のあまり目に入っていなかったが、レディの後ろに20代半ばとおぼしき若い女性が立っていることに今更ながら気づく。
「ミスター・ブレナン。彼女は今回の事業の責任者として働いてもらう私の新しい使用人のアルティシア・ソム・ダイクンです。」

ただでさえ緊張で硬直していた俺の思考回路はますます混乱の一途をたどる。
暗殺され、それがあの悪夢の戦争の始まりとなったあのジオン・ズム・ダイクンのダイクン?
俺の所属が地べたにべったりのアフリカ戦線だったとはいえ、宇宙軍にダイクンの孤児が従軍していた、という噂はイヤでも耳に入っていた。
「私は彼女が持ち込んだ孤児救済計画に"真摯さ"を感じたので全面的なバックアップをすることを決心しました。
その一環としてミスター・ブレナン、彼女の助言者としてオブライアン女史にアドバイザーとして適切な人物としてあなたを紹介して頂きました。」

重い…俺にはあまりにもそれ、重すぎるよオブライアン先生…。

「実質的な運営については全て彼女に任せるつもりでいます。
場所やスタッフなど必要なものについては出来るかぎり用意できるよう尽力しますが、実際の運営については彼女自身どれだけの覚悟を持って努力出来るか次第ですから。」

いやはや、随分とお厳しい。

「ミス・アルティシア。御足労頂いたミスター・ブレナンを事務所へご案内して、支援計画や必要な手続きについて十分打ち合わせや相談をなさい」
「何から何までありがとうございます、マダム。ブレナンさん、事務所へご案内します。」

レディ・バーリーは俺とダイクンの孤児とおぼしき女性を残して行ってしまった。

彼女は確かに何か独特の、付け焼刃でない育ちの良さがにじみ出てはいるが俺から見ればただの小娘に見えなくもない。
マダムは何故この若い娘の為に私財を出し、場所や人材まで提供して財団を立ち上げるおつもりになったのだろうか?
ぼんやりそんなことを考えているうちに、空き部屋になっていた離れを事務所に改装したと思われる部屋へと通され、こじんまりとした応接セットへと案内される。


「新しい法人を立ち上げるのに必要と思われる書類はひととおりそろえたつもりですが、確認して頂けます?」
アルティシアと紹介されたその小娘、もとい、女性は月の裏側にヒトが暮らす時代になっても紙媒体が大好きなお役所気質を存じているのか、活動計画書やら申請書類やら諸々の束の入った封筒を俺の前にそっと差し出す。
「飲み物は紅茶でよろしいかしら?」
「はい、…よろしいです。出来ればグラス一杯の水も一緒に…
「?」
俺は封筒から書類の束を出して目を通そうと思う、が色々なことが引っ掛かって文字が全く目に入らない。

http://blog-entry.com/ys422/rank.cgi?mode=r_link&id=320


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