2004-11-29

山さんの様子が変だ

テーマ:僕の生活
いつかの梅干の礼を言いに山さんのハウスへ。
外から呼びかけてもなかなか出てこないので
ちらっと中を覗いてみると、
緑のジャンパーを頭から被り
横になった山さんが小刻みに震えていた。

これはただ事ではない。
そう感じ、山さんへ近づこうと
ハウスに足を踏み入れた瞬間だった。

「入るな!」

突然山さんの怒声が響いた。
ビクっとして足が止まる。
少しだけこちらに目をやり、
テントに入ろうとしたのが
私だと気付くと、山さんは
また同じようにジャンパーを被り

「ゴメン。何か風邪っぽくて。
うつしちゃアレだと思ったから。今出るから」

と呟くように言った。
外に出てしばらく待っていると
ブビーっと手鼻をかむ音が何度か響いた後
いつもより少しだけほんのり赤く色づいた山さんが出てきた。

「ごめんごめん!風邪引いちゃってさ!ホラ、アレだから!
家ん中バイ菌がウヨウヨでヤラれちゃうから!」

いつもの口調で笑いながら言う山さん。
山さんに何があったかは知らないし、聞く気もない。
ひたすら気丈に振る舞う山さんの気持ちを思うと、
無神経で間が悪い自分がただひたすら恥ずかしかった。
2004-11-28

叫び

テーマ:僕の生活
朝方、まだ行った事がない所に
行ってみようと思い立ち、名前だけ知っていた
公園を目的地に決め、ブラリと出発。

思ったよりも順調に、1時間ほどで到着。
この公園にもご多分に漏れず、同業者が多い。
何気なくふらふらと公園内を散策していると、
突然公園の一角から、叫び声が聞こえた。

何事かと思って、近づいてみると、
一人の同業者の男が、同じ所を行ったり来たりして、
何事か叫んでいた。

「だから駄目なんだ!」

よく聞き取れない、言葉にならない言葉で怒鳴っている。
時折、「シッ!シッ!」と歯の隙間から擦過音を出すので、
威嚇されているようだ。

ご同輩として、この辺りの状況などでも聞ければ、と思ったが、
とても話しかけられる雰囲気でもなかったので、
早々にその場を後にしていつもの公園へ戻る。

こうりゃん先生にさっき見た男の話をすると
「結局、こんな生活を続けると、
人間はどこかおかしくなってしまうもんなんですよ。
弱いもんなんです、人間なんてもんは。」

と、なぜか寂しそうな、困ったような表情でポツリとつぶやいた。
その言葉を聞き、私やこの公園の仲間も紙一重であり、
まだなんとか人付き合いが出来ているだけなんだな、と
今さらながら気づいた。いや、気づかされてしまった。
ただなんとも言えない寂しさだけが残る。
2004-11-27

真っ赤な鼻の下

テーマ:僕の生活
昨晩から寒気がひどい。
風邪を引いたようだ。

こうりゃん先生にもらった風邪薬を飲んで、
ノボル君の漫画喫茶で少し休ませてもらったので、
なんとか熱は引いたようだが、
鼻をかみすぎたので、鼻の下が真っ赤になってしまった。

真っ赤になった鼻の下を見た
キンさんに大笑いされてしまった。

キンさんだって酒焼けで顔が真っ赤なのに、
失礼な人だ、と思ったが、
あんまり気持ちの良い顔で笑うので
ついついつられて笑ってしまった。

ともあれ、大事に至らなくて本当に良かった。
2004-11-25

マーちゃん

テーマ:僕の生活
今朝、マーちゃんが死んだ。
うどん鍋のとき、声をかけても寝ているままだったから、
調子が悪かったのか。

木元のじいさんが連絡したのだろう、
昼前には青いビニールシートでくるまれて運ばれていった。

身元不明のマーちゃんは、これで仏さまの所属になった。

だれも何もいわない。

「片付けようか?…んん…後でいいか」

とヤマさんがマーちゃんのダンボール小屋を覗きこむ。
壊れたラジオがひとつころがっていた。
2004-11-24

悪魔

テーマ:僕の生活
朝からヤマちゃんが困り顔。
潰してまとめておいたアルミ缶が
少し目を離した隙に持ち去られてしまったというのだ。
犯人に心当たりは無いかと訪ねると

「はっきりとはわかんねぇけど、
絶対アクマの野郎だよ…
センさんと一緒にあいつも帰ってきたらしいからな…」

とがっくりした様子でつぶやいた。
アクマ!あいつも帰ってきたのか…

伸ばしっぱなしの半分剥げあがったザンバラ髪に
彫りの深い目、突き出した顎に鷲っぱな…
「悪魔」という形容がピッタリの近寄り難い風貌に加え、
社交的ではないその性格が災いして皆から
「アクマ」と呼ばれ、恐れられていた。

タクマだかワジマだかが訛ってアクマになったという説や、
自転車を蹴飛ばしたり、通行人を急に怒鳴ってみたり、
その粗暴な行動から近所の小学生がアクマと呼び始めた、
という説もあるが、とにかく謎と問題行動が多い男なのだ。

ただ一人、覗き仲間のせんずりセンさんだけには
心を許しているらしいが、どちらにせよ、
あまり誉められた男ではない。

センさんの顔の広さと、こうりゃん先生のフォロ-の
お陰で何とか公園でやっていけてはいるが、
親分が仕切っているガード下辺りで揉めたら、
面倒な事になる恐れがある。

一度、センさん、こうりゃん先生に相談して、
早いうちに手を打って置いた方が良さそうだ。

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