ノリさんがにこにこしながら
「今号はすごい、今号はいいよ」と
ビックイシューを一冊見せてくれた。
表紙には、また知らない黒人の女性。
ノリさんも知らなかったそうだ。
ところが昨日、ダンスを習っているという
若い女の子の二人連れがラジカセ持参でやってきて
「このアーチスト、私たち大好きなんですよ、
横で踊ってもいいですか?」
といって、表紙のアンジー・ストーンという歌手の音楽で、
20分ほど踊っていったらしい。
そうすると若い子たちが
「これアンジー・ストーンですよね、
インタビューが載っているんですか?」
といって、女の子たちのダンスを見物がてら、
手を伸ばし、あっというまに売れてしまったとのこと。
「夜もまた来ます。夜はイルミネーションのあるところに移動しませんか?」といわれたけれど、
「売る場所が決まっているから」
といって、断ったそうだ。
ルールを守りきちんとしているノリさんらしい返事だな。
でも今日の午後から、またラジカセを持って
踊ってくれるというので、
また少し仕入れてがんばってみよう、ということらしい。
「それでね、売れたのもうれしいんだけど、
今日はずいぶんいろんな人に声をかけてもらったのよ。
だからね、1冊だけ残してちょっと読んで勉強しようかと思ってさ」
売り子を始めた頃は、雨の日が多く、
たいへんだなあと思っていたけれど、
天気のいい日は師走気分も手伝って、
おちついたペースで売れているらしい。
ノリさん年末年始は、
その金であったかい旅館にでも泊まるんだろう。
うらやましい。
自分もとにかくなにかしてみようかなと思うけれど、
やはりあまり何もおもいつかない。