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2004-11-30

続・パンパーティー

テーマ:今日の食事
少しずつ体を動かして暖めつつ、
ゆっくりと目を覚ましながら起き上がり外に出る。

山ちゃんは、相変わらず上機嫌で、
あちこちにパンパーティー!と声をかけて回っているようだ。
立場を忘れて少し浮かれ気分の自分に戸惑いながらも、
今日くらいは、と割り切って楽しむ事に。

キンさん、カズ姉、山さん、ノリさん、
こうりゃん先生、ナベさん、センさん、ヨっさん・・・
知った顔が続々と、何かを手に集まってきた。

ジャム、マーガリン、はちみつ、カレー、水あめ・・・
皆いろいろと溜め込んでいるなぁと関心しながら、
様々なものを塗ってパンを楽しむ。
なかなかに優雅な昼飯である。

「パンパーティーか!なんかパンティーみてぇだな!」

センさんの下品な駄洒落も絶好調だ。
ある程度満腹になった後は、
その場で皆と話し込む。たわいの無い話や、
これからの話、そしていなくなった仲間の話。

日が暮れ、腹もこなれた頃、
ヨシさんがフライパンとガスコンロを手にやってきた。
そのまま夜のパンパーティーが始まる。

ヨシさんは、まず手始めにと、
余ったパンをバターとにんにくでカリっと焼いてくれた。
なかなかシャレた味で美味い。

どこからか酒が入る。
日本酒、焼酎からワイン、気は抜けているが
シャンパンのようなものまである。
皆本当に色々拾って溜め込んでいるんだなぁと、改めて驚く。

最後にヨシさんは、こうりゃん先生が持ってきた
リンゴを甘く焼いて出してくれた。
酒も入り上機嫌のカズ姉は

「あぁ、なんか外国のあそこにでも行った気分だよ!」

とうっとりした様子でキンさんにしなだれかかっている。
キンさんも「ベタベタすんなよ!」と言いながらも
まんざらでもない様子だ。

少し離れたところから楽しそうな皆を眺めていると、
いつの間にか隣に座っていたこうりゃん先生が

「楽しいですねぇ。本当に楽しいです。
でも現状に満足しては決していけませんよ。
今日は特別なんですから。」

と、優しくもはっきりとした口調でつぶやいた。
そうですね、と返事をしてふと我に返った。
今日は特別なのだ。こんな日は本当に特別だ。

今年の冬も何人か仲間を失うだろう。
明日だって食べ物にありつけるか解らない。
そして自分も皆もこんな生活をいつまでも続ける訳には行かないのだ。

乞食は3日やったらやめられない。
そんな言葉を思い出した。
2004-11-30

パンパーティー

テーマ:今日の食事
「おいおいおい!見ろよ見ろよ!」

山ちゃんの声で目が覚めたが、
寒さの中一晩過ごし、
ガチガチに固まった体はすぐには動いてくれない。

「何やってんだよ!売り切れちまうゼ!」

ハウスの外で山ちゃんが更に大声を上げる。
毛布に包まったまま、少しだけ体を動かして
何とか顔だけを声のする方へ向けると、
パンが大量に詰まったゴミ袋を二つ、
サンタクロースのように背負って、
嬉しそうに笑っている山ちゃんが誇らしげに立っている。

「もうパーティーパーティ!パンパーティー!」

無邪気に叫ぶ山ちゃん。
朝からそんな食えないよ、と笑って応えたが、
内心、これで今日はのんびりできるな、と少しホっとしていた。

なんでも、ハンバーガー屋の余り物らしいのだが、
普段は残飯までしっかり管理されているので、
ここまで大量にはなかなか手に入れられない。
肉は挟まっていないが、皆を集めれば何かかしらの
具は集まるだろう。
あぁ、よだれが出てきた。
2004-11-29

キンさんとキャッシー

テーマ:今日の食事
せんずりセンさんが帰ってきてからというもの、
センさんのエロ本に当てられているのか、皆女の話に夢中だ。

「やっぱよう、金髪が最高だぜ。ありゃいい。
オレは北海道の現場入ったことあんだけどヨ、
キャバレーいくとよ、マリリンみたいな露助がいっぱいいんだ。
金髪にチヤホヤされんのはたまんねぇゼ。
ボインもすげぇしよう。ニオイもスケベなんだこれが!」

キンさんの金髪話に皆目を血走らせ、夢中で聞き入っている。

「ほんでヨ!キャッシーつうのが、またオレにホレてやがってな!
キンサンスキヨスキヨってうるせぇんだ!ありゃまいっちまったナ!
夜は夜でヨ!来んなつってんのに大部屋まで来ちまって、
しかたねぇからオレも近所の連れ込みまで・・・」

いよいよ、というとこで話がピタリと止まった。
何事かとキンさんの視線を追うと、
その先にはふくれっツラのカズ姉がいた。

「アンタたちホント馬鹿だよ!
そんなサンピンのヨタ話信じてんのかい?
ウソに決まってんだろ!誰がそんなブ男に惚れるんだい。
あぁ!馬鹿らしい!!」

そう言い捨てて、呆然とする皆を残し
カズ姉はフラっとどこか行ってしまった。
しばしの沈黙の後、キンさんが

「なんだってんだ!あのババァ!
話の腰を折りやがってヨ!
キャッシーの話はホントだっての!」
あーもう解散解散!この話はまた今度!」

と、両手を大きく振りながら
カズ姉が消えていった方向に、
同じようにフラフラと消えていった。

再度の沈黙の後、顔を見合わせて大いに笑った。
似た者同士の、ステキな連れ合いがいる
キンさんが本当に羨ましい。
2004-11-29

山さんの様子が変だ

テーマ:僕の生活
いつかの梅干の礼を言いに山さんのハウスへ。
外から呼びかけてもなかなか出てこないので
ちらっと中を覗いてみると、
緑のジャンパーを頭から被り
横になった山さんが小刻みに震えていた。

これはただ事ではない。
そう感じ、山さんへ近づこうと
ハウスに足を踏み入れた瞬間だった。

「入るな!」

突然山さんの怒声が響いた。
ビクっとして足が止まる。
少しだけこちらに目をやり、
テントに入ろうとしたのが
私だと気付くと、山さんは
また同じようにジャンパーを被り

「ゴメン。何か風邪っぽくて。
うつしちゃアレだと思ったから。今出るから」

と呟くように言った。
外に出てしばらく待っていると
ブビーっと手鼻をかむ音が何度か響いた後
いつもより少しだけほんのり赤く色づいた山さんが出てきた。

「ごめんごめん!風邪引いちゃってさ!ホラ、アレだから!
家ん中バイ菌がウヨウヨでヤラれちゃうから!」

いつもの口調で笑いながら言う山さん。
山さんに何があったかは知らないし、聞く気もない。
ひたすら気丈に振る舞う山さんの気持ちを思うと、
無神経で間が悪い自分がただひたすら恥ずかしかった。
2004-11-28

叫び

テーマ:僕の生活
朝方、まだ行った事がない所に
行ってみようと思い立ち、名前だけ知っていた
公園を目的地に決め、ブラリと出発。

思ったよりも順調に、1時間ほどで到着。
この公園にもご多分に漏れず、同業者が多い。
何気なくふらふらと公園内を散策していると、
突然公園の一角から、叫び声が聞こえた。

何事かと思って、近づいてみると、
一人の同業者の男が、同じ所を行ったり来たりして、
何事か叫んでいた。

「だから駄目なんだ!」

よく聞き取れない、言葉にならない言葉で怒鳴っている。
時折、「シッ!シッ!」と歯の隙間から擦過音を出すので、
威嚇されているようだ。

ご同輩として、この辺りの状況などでも聞ければ、と思ったが、
とても話しかけられる雰囲気でもなかったので、
早々にその場を後にしていつもの公園へ戻る。

こうりゃん先生にさっき見た男の話をすると
「結局、こんな生活を続けると、
人間はどこかおかしくなってしまうもんなんですよ。
弱いもんなんです、人間なんてもんは。」

と、なぜか寂しそうな、困ったような表情でポツリとつぶやいた。
その言葉を聞き、私やこの公園の仲間も紙一重であり、
まだなんとか人付き合いが出来ているだけなんだな、と
今さらながら気づいた。いや、気づかされてしまった。
ただなんとも言えない寂しさだけが残る。

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