絆…
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>
2012-05-06 22:28:00

なぜなら、与えることは受けとることなのだから…

テーマ:日記
いつも通りに渋谷から銀座線で上野へ向かっていた。


日本橋駅に着いた時、ある老夫婦が乗り込んできた。


老夫婦は車内を見渡すと、空いていた私の隣の席についた。


席に着くなり女性(おそらく奥様であろう)の方が私に「この電車は上野に行きますか?」


とたずねてきた。


ちょうど私も上野での乗り換えだったので


「行きますよ」と答えた。


女性は「ありがとう」と返した。


そして、隣にいる男性(おそらく旦那様であろう)に上野に行くそうよ


と話かけていた。


しかし、男性は「神田いくぞ、いや、東京だ」と女性が投げたボールにたいして悪送球をしていた。


認知症…


おそらくそうなのだろう。となりで女性が必死で話かけていたが、話は噛み合ってはいなかった。


「あのう…」


再び女性が話かけてきた。


「上野まではどれくらいで着きますか?」


そうたずねてきた。


私は車内の現在地の駅が標示されている案内に目を向けた。


ちょうどあと、3駅で上野だったので、


「あと3駅ですよ」


と答えた。


女性は「ありがとう…」とつぶやいた。


そして、また隣の男性にあと3駅だそうよ、と話かけていたが相変わらず男性は神田だ東京だと言っていた。


「乗り過ごさないように駅のアナウンスをしっかり聞かなくちゃ…」


女性が独り言をつぶやいた。


私は


「あの、私も上野で降りるので上野についたらお声かけますよ」


と伝えると、


「ありがとうございます、助かります。」


と言うと再び隣の男性にこの方が着いたら教えてくれるのだって…と話かけていたが、今度は男性は無言だった。


上野に着くと大勢の人が降りたタイミングを見計らって老夫婦の女性の方に


「上野に着きましたよ」


と伝えた。


女性は


「ありがとうございます。助かりました。」


と言うと隣の男性の手を引き電車を降りた。


ホームには沢山の人が早足で歩いているが老夫婦は自分達のペースで歩いていた。


高齢者なのでそれは当然なのだが、なんとなく彼らのことが気になり気がつくと彼らの後ろを彼らのペースで歩いていた。


少しホームを進と2人は立ち止まりあたりをキョロキョロし始めた。


迷っているのは明白だったので、


私は彼らの後ろから近寄り


「どちらかお探しですか?」


と再び声をかけた。


女性の方は、私と気づき


「あ、先ほどの方ですね、実は松戸まで行きたいんだけど、何処で乗り換えていいのかわからなくて…」


そう言った。


私はとっさに


「あ、松戸に行かれるのですね、では、私が乗り換え口まで案内しますよ」


と言うと


女性は顔を強ばらせ


「本当ですか?いや、でも悪いので…」


と、まだ言葉は続きがあったが私はそれをさえぎり


さあ、行きましょうと2人を誘導した。


上野の中央改札へ着くまでの間、女性は「悪いね…悪いね…」と呟いていた。しかし男性は無言だった。


中央改札へ着きここから常磐線に乗ると松戸へ行けることを説明すると、


女性は


「本当にありがとうございました。本当に助かりました…」


と私の手を握りしめ頭を何度も下げた。


「いいですよ…気をつけてくださいね」


女性の手を握り返しそう伝えた。


改札を抜けて歩いていく老夫婦の姿を見えなくなるまで見守った。


名前も知らない今、出会ったばかりの赤の他人のはずなのに…


そう思いながらも私は老夫婦に感謝した。


なぜなら…


「ありがとう」


この感謝の言葉を頂けたのだから


与えることは受けとることなのだから…


マザーテレサの言葉が胸に染みた。
最近の画像つき記事
画像一覧へ ]
2012-04-30 22:34:00

代償

テーマ:詩集
傷つけた…


たくさん傷つけた…


でも、君は涙を流しながら僕の側にいてくれた。


全ては僕のわがままだった。いや、時恋に染みた幻影に踊らされているピエロだった。


儚くも苦し紛れに満ちた知りしその空間は、


自愛を越え憎しみへと変わっていた。


愛しているのに…


こんなにも愛しているのに…


「好きだから、嫌なことでも許せるの」


君のその言葉が歪んだ愛の形を加速させた。


独占したいのに突き放してしまう、暴走した感情は形を変え言葉の暴力へと姿を変えた。


それでも君は涙を流しながらも無言だったね…


僕の中にはいつまでも側にいてくれるという根拠のな屈折しきった心が覚醒した。


傷つけた…


たくさん傷つけた…


その代償は僕のこれからの心音の響きを暗黒の音色へと変えた。


僕が受けとることになった君からの復讐


それは、無言の


さよなら…だった。
2012-04-28 19:24:00

いつまでも

テーマ:小説
もうどれくらいの月日がたっただろうか君を見つめるだけの日々を…


私はこの場所から彼女を見つめている。


ここは駅から少し離れた住宅街、彼女はこの住宅街にあるマンションに住んでいる。


決して高級マンションというわけではないが、一人暮らしのOLにとってはそこそこ綺麗で値段も手頃らしかった。


私はそのマンションの前にあるコインランドリーの前から彼女の部屋を見上げた。


今日は休日というのもあり、洗濯物を干しにベランダにでてこないだろうかと期待をこめて待った。


かなりの時間待ちぼうけをくらったが、やっと彼女はベランダに出てきた。


ベランダに出てきた彼女は、特に洗濯物を干す様子もなく、ただ外を眺めていた。


3階にいる彼女の表情はこの場所からでもよく見えた。


やはりいつものように笑うことはなかった。


彼女はしばらく外の風景を目に焼き付けると、再び部屋の中へ戻っていった。


そしてカーテンが敷かれた。


もう日もくれたので今日は出てくることはないだろう…


しかし、また明日彼女の姿を見れるかと思うとそこに哀しみはなかった。


今日もやはりここで休むとしよう…


私は、しばらくこの場所で彼女を見守る生活をしている。


由緒…


年齢は30歳だが、美容師という職業が彼女の年齢の進行を妨げていた。


たまたま彼女の勤める店に行ったのが出会いだった。


彼女は美容師としての技術はもちろんのこと会話力も抜群で人気の美容師だった。


気がつけば私は彼女に会うために店に通うようになった。


長めだった髪型が、気がつけばベリーショートになっていた。


それでも彼女に会えるだけで幸せを感じた。


そしていつの日か、彼女を独占したいと思うようになっていた。


それから時は流れ


私の日課は彼女を見守ることにある。


彼女の部屋の電気が消えた。


今日はもう寝るようだ。


私は口にはださないが、心の中で「おやすみ」とつぶやいた。


そして、朝になった。


私はこの場所で朝を迎えた。それは今日だけではなく毎日のことだ。


彼女の部屋を見上げた。するともうすでにカーテンが開いていた。


あ、もうすぐ出勤の時間だな、もう少ししたら彼女がマンションから出てくるだるろう…


私は胸を踊らせた、今日も彼女に会えるのだと


しばらくすると、彼女がマンションから出てきた。


今日もいつものようにオシャレで身を固めていた。


そして、私の前を素通りしそのまま歩いて行った。


私は彼女の少し後ろを彼女のペースで歩いた。


マンション付近はあまり人通りはないが、駅に近づくとさすがに人通りは多くなる。


たまに私を見て怯えたような表情で足早に遠ざかる人を見かけるが気にはならなかった。


駅の改札を過ぎ、駅のホームに出た。


私はごくまれにここで同業者にあうことがある。


しかし、気づいたとしてもお互い目を会わすこともないが、むこうも気づいていることは明白だった。


電車に乗り込み3駅先の彼女の職場である美容室についた。


私は夜は彼女のマンションの前にいるが、昼間はこの美容室のすぐ側にある街灯の前で彼女を見ている。


外から彼女の接客している姿が見える。


今すぐにでも店の中に入りたくなったがそれはできなかった。


この場所から彼女を見つめることが唯一私に許された行為だからだ。


しかし、男性客を接客してる彼女の姿を見るとやるせない嫉妬心が押し寄せてきた。


でも、私はその感情に憤りを感じるどころか喜びを感じていた。


まだココロが残っているという喜びを…


ただ美容室を眺めているだけだが、時の流れははやかった。


あたりは薄暗くなり、店の閉店時間が訪れた。


店からは「おつかれさま!」という声と共にスタッフがちらほら出てきた。


私は由緒が出てくるのを待っていた。


ようやく彼女が出てきた。


そして、朝と同様に私は彼女の後ろを彼女のペースで歩いた。


5分ほど歩くと駅へついた。


いつもと変わらず改札をくぐりホームへ出た。


しばらくすると電車がやってきた。彼女はその電車へ乗り込むと空席があるにも関わらずドアの側へ立ち外を眺めていた。


私は逆のドアの側へ立ちガラス越しに見える彼女の表情を見つめた。


いつも帰りの電車では、席に座り、ファッション雑誌を読んでいるのに今日はどうしたのだろう…


と、心配になった。


3駅目の彼女の最寄り駅へ着いた。


私はまた彼女の後ろを歩かねばならないので、彼女がホームに出るのを待った。


しかし、彼女は降りなかった。


あれ?と不思議に思った。


もしかしたら考え事をしていて、降りるのを忘れているのだろうかとも思ったが、それを伝えることもできぬまま、再び電車は走り出した。


相変わらず彼女は立ちながら外の風景を見つめている。


1駅通過し、2駅通過した場所で彼女はようやく動き出した。


なぜ、この駅で…


疑問に思ったがしかたがない私は彼女の行動に従うしかなかった。


改札を出て彼女はしばらく歩き出した。


そこはちょっとした商店街で、小さなレストランや喫茶店が立ち並んでいた。


商店街を抜けると少し大きめの車道に出た。


ちょうど帰宅ラッシュということもあり混雑をしていた。


なかなか変わらなかった信号が青に変わり彼女は反対側へ渡った。そしてその場に立ちどまった。


私は彼女のすぐ後ろまで近寄った。


すると、由緒の目にから涙がこぼれ落ちているのがわかった。


その瞬間、私の身体中に電流が走り全ての記憶が甦ってきた。


由緒は泣きながらバックから一枚の写真を取り出した。


そこには、幸せの絶頂にいるカップルの姿が映っていた。


「雄介…どうして…どうしてなの…」


涙声になりよく聞こえなかったがおそらく由緒はそう呟いたのだろう。


由緒と私が微笑んでいる写真はいつの間にか由緒の胸に埋まっていた。


1年前の今日、私はこの場所でこの世界の住人になった。


そう、自殺者は地獄へ行くのだと生前は聞いていたが、どうやら事実だったらしい…


愛する人の側にいながら話しかけられず気づいてももらえない刹那


これが地獄なんだろうと…


気づかれなくてもいい


私は透き通る腕で由緒を抱き締めた。


由緒はまだうつむき泣いている。


由緒の耳元で何度も謝罪した。


「ごめん、本当にごめん」


私はこのままさ迷い続ける


いつまでも、そう、いつまでも…


由緒に話しても理解してもらえないだろう…


なぜ私が自らトラックに飛び込んだのか…


でも話さずにはいられなかった。私の声なんて聞こえないはずなのに…


「由緒…実は…」


end





Amebaおすすめキーワード

    1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>
    アメーバに会員登録して、ブログをつくろう! powered by Ameba (アメーバ)|ブログを中心とした登録無料サイト